日本作物学会紀事
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メキシコ合衆国バハ・カリフォルニア州の沙漠地域で点滴灌漑を用いて栽培したトウガラシおよびメロンの収穫期における根系の形態
森田 茂紀豊田 正範
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1998 年 67 巻 3 号 p. 353-357

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抄録

メキシコ合衆国バハ・カリフォルニア州のゲレロ・ネグロにおいて, 日本政府とメキシコ政府の共同事業としてメキシコ沙漠地域農業開発プロジェクト(以下, プロジェクト)が実施されている.プロジェクトの目的は, 沙漠地域において点滴灌漑を用いて野菜および果樹を栽培するための技術の開発および移転にある.この目的を十分に達成するために, プロジェクトで最も重要な作物であるトウガラシとメロンの根系の形態を, 収穫期に調査した.その結果, 露地栽培のトウガラシの場合は, 根長密度が土壌表面から深くなるにつれて緩やかに減少し, 深さ20cm以下で急激に小さくなっていたが, 条直下と条間の根長密度の差は小さかった.畝立マルチ栽培のメロンの場合は, 畝の中の根長密度がかなり大きく, 畝の外では小さかった.主根から形成された側根には, 線虫の被害と考えられる多数のコブが認められた.次に, 根系形態に及ぼす点滴灌漑の影響を検討するため, 点滴チューブが配置された側と反対側における根長密度を比較した。その結果, トウガラシでは, 条の左右のいくつかの地点で, 根長密度に統計的に有意な差が認められた.一方, メロンではどの地点についても有意な差は認められなかったが, 根長密度の分布が部分的に非対称であった.以上のような根系分布の非対称性は, 点滴チューブの有無によるものと考えられる.なお, 予備調査の結果, 根長密度が高い部分で側根の形成が発達していること, とくに側根が長いことが示唆された.

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