日本作物学会紀事
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インゲンマメ種子の発芽に伴う貯蔵物質の動態に関する電子顕微鏡観察
柏葉 晃一松田 智明大石 秀夫長南 信雄
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1998 年 67 巻 3 号 p. 358-365

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抄録

種子の発芽に伴う貯蔵物質の消費動態に関する微細構造的特徴を検討するため, 発芽器のインゲンマメ子葉柔細胞を走査電子顕微鏡と透過電子顕微鏡を併用して観察した.吸水に伴って最初に認められた微細構造的変化はタンパク顆粒からの液胞の形成であった.発芽初期の子葉柔細胞では直径5μm前後のタンパク顆粒の急速な減少に伴い多数の液胞が認められた.これらの液胞は互いに融合し, 大型の液胞を形成した.液胞の周囲には粗面小胞体(RER)の発達の電子密度の高い小胞が観察された.液胞の形成が進行した子葉柔細胞では, 電子密度の高い小胞の増加と中空な小胞が認められた.また, 発芽中期の子葉柔細胞ではアミロプラストの急速な小型化とともに, 新たなプラスチドの形成が認められた.プラスチドは小型のデンプン粒と内膜系を有していた.発芽後期になるとプラスチドのデンプン粒は消失し内膜系が発達した.以上の観察結果から, 発芽初期から発芽中期にタンパク質の消費が集中的に行われること, 大型の液胞の形成とRERの発達および中空の小胞の増加とが密接に関係していること, また, デンプンの消費は発芽中期から後期にかけて行われ, 新たなプラスチドの形成が認められることが明らかになった.

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