日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
低温発芽性の水稲良食味品種への導入
福岡 律子西村 実小川 紹文梶 亮太平林 秀介深浦 壮一
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 68 巻 2 号 p. 231-234

詳細
抄録
水稲の直播栽培用良食味品種の育成を目的として,低温発芽性の優れた外国品種を日本の良食味品種に戻し交配し,その後代系統について低温発芽性に関して検定と選抜を繰り返し,低温発芽性の極めて優れた系統を得た.まず,日本稲10品種および直播向け外国稲10品種について低温発芽性検定を行った結果,供試した外国稲の多くは優れた低温発芽性を備えていることがわかった.そこで,これらの外国稲の一部にコシヒカリ,キヌヒカリ,ヒノヒカリを反復親として戻し交配を行い,コシヒカリ3/M202,ヒノヒカリ3/M202,コシヒカリ3/Italica Livorno,コシヒカリ3/Mutashali,キヌヒカリ3/Mutashaliの合計5組合せのBC2F2について低温発芽性の検定を実施したところ,全ての組合せで反復親の日本稲より極めて高い低温発芽性を有する系統が存在することが明らかになった.特に,コシヒカリ3/M202(66系統),ヒノヒカリ3/M202(51系統),コシヒカリ3/Mutashali(51系統)の組合せから低温発芽率(置床7日後における25℃での発芽率に対する15℃での発芽率)が81%を越える系統がそれぞれ8系統,11系統,1系統見いだされた.次に,ヒノヒカリ3/M202で低温発芽性の優れていた系統に,さらにもう一回ヒノヒカリを交配しBC3F2世代(35系統)で再び低温発芽性の検定を行ったところ,低温発芽性の極めて高い系統が5系統得られた.以上の結果から,M202などの外国稲のもつ優れた低温発芽性を日本の良食味品種に導入し直播栽培用良食味品種を育成することは可能であると考えられた.
著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top