抄録
1970年代半ば以降現在までの東北地方における主要な普及品種(4)と寒冷地を対象に育成された多数の新規育成品種(21~24品種)を用いて,2ヵ年にわたり収量性,各収量構成要素および収穫指数を比較した.坪刈り収量は,96年が716~845g/m2,97年は696~799g/m2であり,両年とも100~130g/m2程度(15~18%)の品種間差異がみられた.新規育成品種の中には750g/m2以上の品種が96年は20,97年は15あり,実用的形質が改善されるとともに,収量性においても向上している品種がいくつか認められた.収量が高かった新規育成品種は,普及品種に比べてシンク容量が拡大しており,その要因は品種により異なっていた.すなわち,1)m2当り籾数を増大することによりシンク容量を拡大している品種;奥羽339号,奥羽316号等,2)m2当り籾数がほぼ同じであっても玄米千粒重がやや大きくシンク容量を拡大している品種;ふくひびき,秋田59号,まなむすめ等,3)m2当り籾数がやや少ないものの玄米千粒重が明らかに大きいことによりほぼ同程度のシンク容量を確保している品種;おきにいり,岩南6号等,4)m2当り籾数,玄米千粒重およびシンク容量ともにほぼ同じ範囲にある品種;はなの舞,じょうでき等の4つのグループに分類された.以上の結果から,寒冷地を対象とした多収性品種を育成するためには,m2当り籾数を増大することあるいはm2当り籾数を維持するとともに玄米千粒重を大きくすることによってシンク容量を拡大することが重要であると推察した.