日本作物学会紀事
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融雪水がソラマメ葉の無機養分含有量に及ぼす影響と雪害との関連
福田 直子鳥山 和伸松村 修湯川 智行小林 正義
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1999 年 68 巻 2 号 p. 289-295

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抄録
暖地積雪地域の雪害に対する融雪水の影響を明らかにする目的で,植物体を不織布で被覆するトンネル区と露地区とを設け,ソラマメ葉の無機養分(K,Ca)の含有量や葉面における分布を調査した.露地区では融雪水は積雪初期から1日平均15mm流下したが,トンネル区内に流下する融雪水量は露地区の約60%であった.融雪水のpHは一時的に4を下回る酸性であった.積雪下で雪害は著しく進行し,露地区の全ての葉が根雪52日後には壊死したのに対し,トンネル区の壊死葉面積率は20%と低かった.葉中のKの含有量は根雪期間中に低下し,トンネル区よりも露地区で大きく低下する傾向を示した.一方,Caの含有量は露地区で低下したが,トンネル区での低下は認められなかった.また,葉の壊死葉面積率が高いほどCa含有量が低いという関係が認められた.さらに消雪後の健全葉と一部分が壊死した葉の生存部分のK,Ca含有量を測定した結果,両元素とも部分壊死葉における含有量が低かった.また,消雪後の葉面におけるこれらの養分の分布と含有量をX線マイクロアナライザを用いて分析したところ,Kは壊死部分に少なく生存部分に多いのに対して,Caは壊死部分に多く生存部分に少ないことが明らかになった.以上の結果から積雪下では,葉の無機養分は連続的に流下する酸性の融雪水によって溶脱(リーチング)され,減少したと考えられる.特にCa含有量の低下は葉の壊死との関連が認められた.また,無機養分含有量の低下は病原菌や水分ストレスへの耐性を低下させることから,融雪水は作物の雪害を助長すると考察した.
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