日本作物学会紀事
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イネ科作物の器官形成, その形態学的視点
前田 英三
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2000 年 69 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

作物栽培技術の基本は, 作物の生育過程の理解にある.作物の生育には, 茎頂における茎葉の分化と生長が重要な役割を演じる.作物は受精卵から胚組織を形成する際に, 茎頂や根端などの分裂組織を新生し, 発芽後経時的に茎葉を分化する.最近数十年間, 作物の形態学は巨視的領域から微視的分野まで, さまざまな側面で発展した.光学顕微鏡的認識から電子顕微鏡による微細構造の研究に進み, 生理学・生化学・分子生物学との連携が期待できる状況にも達している.またこの間バイオテクノロジーの進展により, 非正常な生理的条件下で正常な器官分化を追求する努力がなされ, 新しい観点から作物器官の特性が取り上げられた.本論文では, この間の事情を, イネ科作物とくにイネを中心に私の関係した側面から紹介する.ここでは, 胚盤の細胞学的特質, 組織培養による茎葉再分化, カルス表層微少領域の形態, 細胞外基質, 受精胚と不定胚の比較などに関して吟味する.

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