日本作物学会紀事
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69 巻, 1 号
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  • 前田 英三
    2000 年69 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    作物栽培技術の基本は, 作物の生育過程の理解にある.作物の生育には, 茎頂における茎葉の分化と生長が重要な役割を演じる.作物は受精卵から胚組織を形成する際に, 茎頂や根端などの分裂組織を新生し, 発芽後経時的に茎葉を分化する.最近数十年間, 作物の形態学は巨視的領域から微視的分野まで, さまざまな側面で発展した.光学顕微鏡的認識から電子顕微鏡による微細構造の研究に進み, 生理学・生化学・分子生物学との連携が期待できる状況にも達している.またこの間バイオテクノロジーの進展により, 非正常な生理的条件下で正常な器官分化を追求する努力がなされ, 新しい観点から作物器官の特性が取り上げられた.本論文では, この間の事情を, イネ科作物とくにイネを中心に私の関係した側面から紹介する.ここでは, 胚盤の細胞学的特質, 組織培養による茎葉再分化, カルス表層微少領域の形態, 細胞外基質, 受精胚と不定胚の比較などに関して吟味する.
  • 池田 武
    2000 年69 巻1 号 p. 12-19
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ個体群の純生産に関わる要因のうち, 栽植密度, 栽植様式, 草型, 葉の調位運動と光合成の要因についてまとめてみた.栽植密度の試験より, 収量は主にm2当り莢数と粒数に強く支配されていることが, また栽植様式の試験より, 収量は畦間を広くして株間を狭めると減少することがわかった.草型については, ラケット型を示すミヤギシロメの特徴を収量を高めることに利用した.光合成要因については, 光合成有効放射と光合成速度との関係は, シンクとソースの能力に影響されることを示唆した.
  • 辻 博之, 山本 泰由, 松尾 和之, 臼木 一英
    2000 年69 巻1 号 p. 20-23
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    陸稲の干害に及ぼす不耕起栽培の影響を検討した.1988, 90, 92年に不耕起とロータリ耕を行った畑地に陸稲(品種:トヨハタモチ)を栽培した.1990, 92年は出穂前1カ月間の降雨が少なく干害が発生し, ロータリ耕区では多雨年であった1988年の約30%, 54%の精籾重となった.一方, 不耕起区はロータリ耕区に比べて干害の程度が軽微であり, 多雨年の60%程度の精籾収量が得られ, 陸稲の干害軽減効果が認められた.不耕起区ではロータリ耕区に比べて出穂が早まり, 表層土壌の乾燥が始まる時期に深さ10cmの土壌水分ポテンシャルの緩やかな低下と, 陸稲の気孔抵抗の日変化が小さいという現象が認められた.また, 1992年の不耕起区は出穂期の地上部生育と根長密度がロータリ耕区に比べて大きかった.これらの結果から, 不耕起栽培による干害の軽減効果は土壌の乾燥が遅れることと, 出穂が早まることによって乾燥ストレスにさらされた期間が短縮されるためと推察された.
  • 杉本 秀樹, 黒野 真伸, 高野 圭子, 河野 靖, 佐藤 亨
    2000 年69 巻1 号 p. 24-30
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    北条市の水田で(瀬戸内平野部)1997年に緑肥レンゲをすき込み夏ソバを栽培したところ, 気象条件に恵まれ無施肥で250g / m2を越える比較的高い収量が得られた.1998年には北条市と本匠村(九州中山間地)の水田で, 冬季休閑した休閑区とレンゲをすき込んだレンゲ区とを設け夏ソバを栽培した.北条市では, 播種期前後の多雨のため苗立ちが揃わず, 全般に生育も阻害され収量も低かった.この傾向は休閑区で特に著しく, 同区の収穫は皆無に近かった.しかし, レンゲ区では112g / m2と前年の47%の収穫があった.本匠村では開花期以降の降水量が平年の2.76倍にも達し, 粒数不足のため収量は低く, レンゲ区で219g / m2, 休閑区ではさらに低く143g / m2であった.北条市のように生育初期段階に, あるいは本匠村のように開花期以降に土壌過湿仁おかれた場合でも, 夏ソバの生育阻害ならびに減収の度合いはレンゲ区の方が休閑区より少なかった.以上の結果は, 緑肥レンゲの作付けとすき込みが, 夏ソバ栽培にとって有効であること, 夏ソバの湿害を軽減する効果があることを示唆するものである.
  • 中川 祥治, 田村 夕利子, 緒方 善丸
    2000 年69 巻1 号 p. 31-37
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1994年から3年間, 同一農家が管理する隣接した有機および慣行栽培水田13組から採取した米の品質特性を比較した.有機および慣行別の平均値が各年次別, および3年間こみのいずれかで統計的に有意な差を示した特性は, 不完全米割合(有機-少), 窒素含量(有機-少), Mg / (K・N)(有機-高), カリウム含量(有機-少), カルシウム含量(有機-少), 亜鉛含量(有機-多), 胚芽活性度(有機-高)であり, 概ね有機栽培米の品質が良かった.これらの特性の内, 窒素含量, Mg / (K・N), カリウム含量および亜鉛含量については, 主に有機栽培水田における比較的少ない窒素施肥量および低い追肥頻度が影響していると推察された.また, ※を収穫した後の水田土壌理化学性を測定した結果, 慣行栽培水田に対して有機栽培水田で可給態ケイ酸が有意に高く, 米の窒素含量低下に関与している可能性が示唆された.
  • 松江 勇次, 内村 要介, 佐藤 大和
    2000 年69 巻1 号 p. 38-42
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    貯蔵期間が異なる場合の発芽率が90%以上である貯蔵水稲種子の生産力を検討するとともに, 貯蔵種子と当該年産種子とが同一品種であるか否かをRAPD法を用いて判別を行い, 貯蔵種子の種子としての適格性を明らかにした.苗の草丈, 苗齢および乾物重と貯蔵期間の長短との間には一定の関係は認められず, 長期貯蔵種子(9~16年), 中期貯蔵種子(6~7年)の苗の形質が当該年産種子に比べて劣ることは認められなかった.一方, 苗の乾物重に対しては精籾干粒重が影響を及ぼしており, 精籾干粒重が重い生産年の種子は苗の乾物重が重かった.長期貯蔵種子, 中期貯蔵種子の出穂期, 稈長, 穂長, 1株穂長, 1株籾数は, 当該年産種子に比べて有意な差は認められず, 同じ生育特性を示した.収量構成要素, 収量および検査等級においても長期貯蔵種子, 中期貯蔵種子は当該年産種子に比べて有意な差で劣ることは認められなかった.長期貯蔵種子と当該年産種子のDNAのアガロースゲル電気泳動像は, 同じバンドパターンを示し, DNAレベルからみおた長期貯蔵種子は当該年産種子と同じであることが確認された.以上のことから, 貯蔵種子の発芽率が90%以上であれば種子としての適格性を具備しており, 実用上問題はないことが明らかとなった.
  • 丹野 久, 木内 均, 平山 裕治, 菊地 治己
    2000 年69 巻1 号 p. 43-48
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲における開花期耐冷性の検定は, 人工気象室などの施設と多くの労力を必要とするため, 実施例が極めて少ない.そこで, 簡易に多数の品種を扱え, 開花期耐冷性育種に利用可能な検定法を考案した.検定材料は, 館15×横5×高さ10cmの軽量な, 方形ポットに, 縦一列に主稈のみからなる8個体の密植直播栽培で養成した.処理は50%遮光幕付人工気象室を用い, 当日出穂の穂が最も多い日の午後5時から17.5℃15日間処理を行い, 処理開始日に出穂した穂の稔実歩合により開花期耐冷性を検定した.±0.8ランクの誤差を許容し, 極弱から極強まで7ランクに判定するために必要な最少の穂数は10, 供試ポット数は3~4である.最低の稔実歩合となる処理開始日が, 15℃8日間処理では品種により異なる(出穂後0~3日)のに対し, 17.5℃15日間処理では各品種ともほぼ出穂日(同0日)であることから, 本法では検定に必要な最低稔実歩合を得るための調査穂数が少なく, 省力的である.本法による検定結果は年次間で高い正の相関が認められ(r=0.808**, n=14), また, 15℃8日間処理や過去に報告された12℃6日間処理による検定結果とも有意な正の相関が得られた(それぞれ, r=0.750**, 0.802**, いずれもn=14).さらに本法の養成個体は圃場に栽培した稲体に比べ小さく一穂籾数が45~50%減少するが, 圃場に栽培した稲に近い一穂籾数の材料(1 / 5000aワグネルポット, 2株, 各株2本植)を検定した結果とも高い正の相関が認められ(r=0.922**, n=8), 有効な検定法と考えられた.
  • 江口 久夫, 島田 信二
    2000 年69 巻1 号 p. 49-53
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コムギの生育期は品種・播種期・年次により変異し, 品種間差と播種期間差は生育初期の播種~幼穂分化相の長さや幼穂分化期で大きく, 後期ほど小さく, 成熟期でもっとも小さかった.幼穂分化期以降の発育相の長さは, その発育相の開始期との間に高い負の相関関係が認められた.このことは播種期・幼穂分化期を早めても, 開花期・成熟期が早まらないことと, 同一の生育期でないと発育相の長さの品種間差が比較できないことを示しており, コムギの早生化を困難にしている原因と思われた.また, 発育相の長さは平均気温と高い負の相関関係を示したが, 他の気象要因とは, 平均気温と相関があるときに相関が高い傾向があり, 直接関係しているかは特定できなかった.気象要因を説明変数として, 発育相の長さを予測する重回帰式を求めたが, 年次により, 計算方法により異なった式になり, 生理的に意味のある予測式は得られなかった.早生化のための育種素材として出穂~開花相, 開花~成熟相が短い品種を人工気象条件(ファイトトロン)で選抜した.出穂~開花相が短い品種は止葉展開~出穂期間が長い傾向があり, 止葉展開~開花期間で標準品種より短い品種は認められなかった.開花~成熟相ではT.speltaなどが2~4日短く, 早生化の育種素材として有望であった.
  • 姚 友礼, 山本 由徳, 新田 洋司, 王 余龍, 呉 華, 吉田 徹志, 宮崎 彰, 蔡 建中
    2000 年69 巻1 号 p. 54-60
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲精籾(比重1.00以上の籾)及び玄米の諸形質と精籾重との関係を明らかにするために, 中国産4品種(インド型及び日本型普通品種とインド型及び日印交雑ハイブリットライス各1品種, 全て粳種)の精籾を比重法で階級別に分け、形態形質を測定した.精籾1粒重の重い品種は比重の高い側に局在分布したが, 粒重の軽い品種は比重の低い側に分散分布した.各品種ともすべての形態形質について玄米の変動係数は精籾より大きかったことから, 籾のサイズが決定された後に発育する玄米の形態変異は, より多きいことが分かった.玄米の厚さはすべての品種において玄米体積を支配する第一の形質であり, 他の形質(長さと幅)の影響程度は品種によって異なった.玄米の体積が増加するほど, 精籾体積のみならず, 精籾比重と精籾重も増加し, 籾摺り歩合も高くなった.籾穀重と精籾重とは供試4品種中2品種が有意な正の相関関係を示したが, 残りの2品種では有意な相関はみられなかった.以上の結果から, 籾の比重は粒重と密接な関係があり, 精籾重は玄米の体積に, また玄米の体積は厚さに主に支配され, 籾穀が玄米の発育や登熟に及ぼす影響には品種間差異が存在すると推定された.
  • 新田 洋司, 姚 友礼, 山本 由徳, 吉田 徹志, 松田 智明, 宮崎 彰
    2000 年69 巻1 号 p. 61-68
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    穂重型日本稲(JP), 穂数型日本稲(JN), 中国産日本型稲(CJ), 日印交雑稲(JI), 長稈インド型稲(TI)および半矮性インド型稲(SDI)の計18品種をポット栽培して, 穂首節間を走向する大維管束の種類と数および横断面積を調査し, 品種(群)間で比較した.CJ, JI, TIおよびSDIでは, 大型(L1)および小型(L2)の大維管束が走向していた.L1の数(9.2~13.0)は品種群間で大差はなかった.L2の数(1.3~9.3)は品種群間差が大きかった.L1とL2の合計は, SDI>TI>JI>CJ>JP>JNの順に多かった.1次枝梗数に対する大維管束の数の比(維管束比)は, JPおよびJNでは1程度であったが, JI, TI, SDIではL2の数が加わった分, 1を大きく越えた.1つのL1における全体および師部横断面積は, JPおよびJNに較べて, JI, TI, SDIで大きい傾向にあった.穂首節間を走向するすべての大維管束の全体および師部の横断面積は, いずれも, SDI>TI, JI>CJ>JP>JNの順で品種群間差異が大きく, L2が走向する品種群で大きかった.水田でJP(コガネマサリ)およびDSI(桂朝2号)を穂肥窒素量を増やして栽培したところ, 穂首節間を走向するすべての大維管束の全体および篩部の横断面積が大きくなる傾向が認められた.今後の水稲育種では, 稲首節間を走向する大維管束の横断面積の拡大, ならびに小型の大維管束の走向による光合成産物の輸送体制の強化が1つの育種目標になると考えられた.
  • 望月 俊宏, 高橋 卯雪, 島村 聡, 福山 正隆
    2000 年69 巻1 号 p. 69-73
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズを含む6種の夏作マメ科作物およびツルマメの幼植物を, 畑および過湿条件で14日間栽培し, 土壌表面直下の胚軸における二次通気組織の形成量を調査した.その結果, 二次通気組織は, 畑区ではいずれの作物・種の胚軸にもほとんど見られなかったが, 過湿区には作物・種間差が認められ, 胚軸横断面あたりの二次通気組織の面積は, ダイズ'アソアオガリ'の9.77mm2以下, ダイズ'アキセンゴク'7.80mm2, ツルマメ4.37mm2, ササゲ2.63mm2, リョクトウ'ブンドウマメ'1.97mm2, リョクトウ'Acc.7703'1.52mm2の順で, 他の3作物では1mm2以下であった.中心柱に対する二次通気組織の面積の比も, ダイズはツルマメについで大きく, ダイズにおける二次通気組織の形成能はツルマメと同程度であることが明らかであった.また, 地上部乾物重比(畑区に対する過湿区の乾物重の比率)と過湿区における二次通気組織の面積との間には, 1%水準で有意な正の相関関係(r=0.738)が認められることから, 二次通気組織の形成能は, マメ科作物における耐湿性の強弱と関係のあることが示唆された.
  • 田川 毅明, 平尾 健二, 窪田 文武
    2000 年69 巻1 号 p. 74-79
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    異なる窒素濃度で水耕栽培した西アフリカ産のOryza glaberrima Steud.4系統を葉身窒素含量の変化に伴うガス代謝, 光化学系最大量子収率(Fv / Fm)ならびに炭酸固定酵素(リブロース1, 5二リン酸カルボキシラーゼ / オキシゲナーゼ, Rubisco)活性等についてO.sativa L.4系統と比較し, O.glaberrimaの光合成における窒素利用効率を検討した.単位葉身窒素含量当たりの光合成速度(窒素利用効率)には明らかな種間差が認められ, 高窒素濃度条件下では, O.sativaに比較し, O.glaberrimaでは葉身窒素含量が増加せず, 光合成速度が向上しなかった.一方, 低窒素濃度条件下ではO.glaberrimaの窒素利用効率が有意に高かった.O.sativaの気孔伝導度は葉身窒素含量が減少すると低下したが, O.glaberrimaでは高い気孔伝導度を維持した.また, 葉肉伝導度もO.glaberrimaで高く, 本種の光合成速度が低窒素栽培条件下でO.sativaよりも高く維持されたのは両伝導度がともに高いことに起因するものであった.葉肉伝導度を支配制御する要因であるクロロフィル含量やFv / FmおよびRubisco(Total)活性の測定値に種間差は認められなかった.しかし, O.glaberimaは単位Rubisco活性に対する光合成効率が高く, in vivoでのRubisco活性化率が高いものと推察された.このようなO.glaberrimaの光合成特性はO.sativaの光合成, 特に低窒素施用条件下での個葉光合成改良のために導入されるべき有用な遺伝形質であると考えられた.
  • 森田 茂紀, 岡本 美輪, 阿部 淳, 山岸 順子
    2000 年69 巻1 号 p. 80-85
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    植物の茎葉部分を切除すると切口から溢泌液が出てくる出液現象は, 根圧による能動的吸水に基づくため, 根系全体の生理的活性の指標となる可能性が高い.そこで本研究では, 圃場で慣行栽培したトウモロコシを用いて, 出液速度の基礎的特性を検討した.出液速度を測定するために茎葉部を切除すると, 生育段階や時刻に関係なく, その直後から出液速度が低下したことから, 茎葉部を切除した影響が比較的早い時期から現れることが明らかとなった.そこで, 毎回異なる個体について茎葉部を切除した直後の出液速度を調査したところ, 午前8時前後に最大値となる日変化が認められた.この結果を踏まえて, 午前中の一定時刻における出液速度を生育初期から登熟にかけて調査したところ, 雄穂が出現する(播種後50日目)ころまで増加し, それ以降は減少した.根系形成をみると, 茎の頂端側から出現した節根ほど節当たりの数が多く, 直径が大きかったが, 雄穂が出現するころには新しく出現してくる節根の数が少なく, 個体当たりの根量は生育に伴ってS字曲線を描いて増加した.個体当たりの出液速度と根系のいくつかの形質との関係を検討したところ, 雄穂の出現時まではそれぞれの間に密接な高い正の相関関係が認められたが, 雄穂が出現してから成熟までは関係が明らかでなかった.出液速度は根量と単位根量当たりの出液速度によって規定される, という視点から解析を進めた結果, 単位根量当たりの出液速度は播種後35日目ころまで増加し, その後減少することが明らかとなった.
  • 福田 直子, 湯川 智行, 松村 修
    2000 年69 巻1 号 p. 86-91
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    耐雪性が品種によって異なる要因の一つとして茎葉の形態特性に着目し, 積雪下における葉の無機養分含有量の変化と茎葉の形態との関係について検討した.積雪下において葉の浸潤と壊死は増加し, 葉のK, Ca, Mg含有量は低下した.葉の壊死の増加及び無機養分の減少程度は耐雪性の強い品種ほど小さかったことから, 耐雪性の強い品種は融雪水による無機養分の溶脱が生じにくいと考えられた.そこで無機養分の溶脱に影響する要因として, 葉の濡れ易さに密接に関連する葉面ワックス量と, 溶脱を促進する葉の傷害程度を調査した.耐雪性の強い品種の葉面粗ワックス量は他の品種よりも特に多くはなかったが, 根雪前の強風を伴ったアラレによって生じる葉の傷の数が顕著に少なかった.一方, 耐雪性強品種は草丈, 節間長, 葉柄長, 個葉面積, 総葉面積および接地面積が他の品種よりも小さく, 葉組織の細胞間隙率が低い形態特性であった.これらの形態は傷の数と有意な正の相関があったことから耐雪性強品種は茎葉が矮性で葉の障害が回避されるために融雪水による無機養分の溶脱が生じにくいと考えられた.さらに傷の数, 草丈, 節間長, 葉柄長, 接地面積は雪害程度と有意な正の相関が認められ, 葉の障害程度や茎葉の形態は品種の耐雪性と関連することが示唆された.
  • 吉村 泰幸, 窪田 文武
    2000 年69 巻1 号 p. 92-94
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    個葉における水や光合成生産物の輸送は主に葉脈を通して行われており, 葉脈網の形態的特性が物質輸送機能との関連で光合成や蒸散作用の制御調節に関わることは十分予想される.そこで本研究では, サツマイモ2品種を用いて, 個葉の葉脈長を推定するための方法としてNewmanの理論を基礎とする格子交差法について検討した.ここで用いたサツマイモ2品種における個葉の平均葉面積は37.3cm2であり, これらを対象にキルビメータを用いて直接測定した1個葉の平均総葉脈長は, 404.7cmであった.格子交差法による測定に際しては, サツマイモ個葉の裏面を複写機によって200%から400%に拡大し, 拡大印刷用紙に格子を印刷したトレーシングペーパーを重ねて交点数を計測した.各個葉の実測葉脈長に対して, 格子交差法によって推測した葉脈長は誤差10%以内にあり, 格子交差法は葉脈長推定のための測定法として有効であると判断された.
  • 有馬 進, 原田 二郎, 浅沼 修一, 三原 実
    2000 年69 巻1 号 p. 95-101
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズにおける根系の生育特性と根粒分布様式をパイプモデルに基づいて解析した.すなわち, 窒素施肥量, 土壌硬度, 土壌生物性, 光などの栽培条件の変更や根粒着生変異体を用いて根系の生育量を変動させ, 開花結莢期に根径階級別の根量分布と根粒着生状態を観察した.その結果, パイプモデルに適合した根径約1mm以上の太根部と適合していない約1mm未満の細根部の量的役割は, 諸条件に伴って根系の生育量が変化しても, ほぼ一定に保たれる傾向を示した.根粒は微細根において形成が始まり, 根径1mm以下の細根に全根粒数の約95%が着生した.また, 根径階級別根粒数は根径階級別根量と高い相関関係を示した.粒径3mm以上に成長した大粒の根粒が全ての根径階級にほぼ均等に着生したことから, 窒素固定活性の高い根粒の分布は, 基本的に根径階級別の維管束量と密接な関係にあることが示唆された.
  • 松江 勇次, 山口 修, 佐藤 大和, 馬場 孝秀, 田中 浩平, 古庄 雅彦, 尾形 武文, 福島 裕助
    2000 年69 巻1 号 p. 102-109
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    福岡県における1998年産の麦類の作況指数と10a当たり平均収量はそれぞれ小麦で50,168kg, 二条大麦で52,173kgと, 戦後3番目の不作で, 外観品質も被害粒の多発生により著しく不良であった.低収要因としては, 生育前半の高温多雨により, 小麦では穂数の減少による粒数の減少したこと, 二条大麦では穂数の減少したことが主であり, さらに小麦, 二条大麦とも登熟期間の高温による結実日数の短縮と登熟期間中の降雨による干粒重や整粒歩合が低下したことによるものと考えられた.外観品質不良の主たる要因は, 小麦では結実日数の短縮による未熟粒の多発, および倒伏状と多雨による赤かび粒, 発芽粒の多発生によるもので, 二条大麦では3月下旬~4月上旬の出穂期の日照不足による側面裂皮粒の多発生と5月上中旬の断続的な降雨による凸腹粒などの被害粒の多発生によるものと考えられた.また, 暖冬多雨年での収量および外観品質に対しては, 追肥の増量効果が認められるとともに, 早播の場合, 踏圧および土入れの効果が顕著であった.
  • 森田 茂紀
    2000 年69 巻1 号 p. 110-112
    発行日: 2000/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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