日本作物学会紀事
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貯蔵水稲種子の生産力とその品種判別へのRAPD法の利用
松江 勇次内村 要介佐藤 大和
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2000 年 69 巻 1 号 p. 38-42

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抄録

貯蔵期間が異なる場合の発芽率が90%以上である貯蔵水稲種子の生産力を検討するとともに, 貯蔵種子と当該年産種子とが同一品種であるか否かをRAPD法を用いて判別を行い, 貯蔵種子の種子としての適格性を明らかにした.苗の草丈, 苗齢および乾物重と貯蔵期間の長短との間には一定の関係は認められず, 長期貯蔵種子(9~16年), 中期貯蔵種子(6~7年)の苗の形質が当該年産種子に比べて劣ることは認められなかった.一方, 苗の乾物重に対しては精籾干粒重が影響を及ぼしており, 精籾干粒重が重い生産年の種子は苗の乾物重が重かった.長期貯蔵種子, 中期貯蔵種子の出穂期, 稈長, 穂長, 1株穂長, 1株籾数は, 当該年産種子に比べて有意な差は認められず, 同じ生育特性を示した.収量構成要素, 収量および検査等級においても長期貯蔵種子, 中期貯蔵種子は当該年産種子に比べて有意な差で劣ることは認められなかった.長期貯蔵種子と当該年産種子のDNAのアガロースゲル電気泳動像は, 同じバンドパターンを示し, DNAレベルからみおた長期貯蔵種子は当該年産種子と同じであることが確認された.以上のことから, 貯蔵種子の発芽率が90%以上であれば種子としての適格性を具備しており, 実用上問題はないことが明らかとなった.

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