日本作物学会紀事
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人工気象室を用いた水稲開花期耐冷性の簡易検定法の開発
丹野 久木内 均平山 裕治菊地 治己
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2000 年 69 巻 1 号 p. 43-48

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抄録

水稲における開花期耐冷性の検定は, 人工気象室などの施設と多くの労力を必要とするため, 実施例が極めて少ない.そこで, 簡易に多数の品種を扱え, 開花期耐冷性育種に利用可能な検定法を考案した.検定材料は, 館15×横5×高さ10cmの軽量な, 方形ポットに, 縦一列に主稈のみからなる8個体の密植直播栽培で養成した.処理は50%遮光幕付人工気象室を用い, 当日出穂の穂が最も多い日の午後5時から17.5℃15日間処理を行い, 処理開始日に出穂した穂の稔実歩合により開花期耐冷性を検定した.±0.8ランクの誤差を許容し, 極弱から極強まで7ランクに判定するために必要な最少の穂数は10, 供試ポット数は3~4である.最低の稔実歩合となる処理開始日が, 15℃8日間処理では品種により異なる(出穂後0~3日)のに対し, 17.5℃15日間処理では各品種ともほぼ出穂日(同0日)であることから, 本法では検定に必要な最低稔実歩合を得るための調査穂数が少なく, 省力的である.本法による検定結果は年次間で高い正の相関が認められ(r=0.808**, n=14), また, 15℃8日間処理や過去に報告された12℃6日間処理による検定結果とも有意な正の相関が得られた(それぞれ, r=0.750**, 0.802**, いずれもn=14).さらに本法の養成個体は圃場に栽培した稲体に比べ小さく一穂籾数が45~50%減少するが, 圃場に栽培した稲に近い一穂籾数の材料(1 / 5000aワグネルポット, 2株, 各株2本植)を検定した結果とも高い正の相関が認められ(r=0.922**, n=8), 有効な検定法と考えられた.

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