日本作物学会紀事
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多収性水稲の品種生態に関する研究 : 苗質と本田初期生育との関係
崔 晶楠谷 彰人豊田 正範浅沼 興一郎
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キーワード: 初期生育, 水稲, 多収性, 稲質
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2000 年 69 巻 3 号 p. 306-313

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抄録

アジア各国で育成された水稲の多収性品種(10品種, 多収品種群)の苗質と本田初期生育との関係を, 従来の日本品種(10品種, 日本品種群)と比較検討した.苗の草丈, 根乾物重, 胚乳消費率に有意な品種群間差が認められ, 多収品種は日本品種よりも草丈が低く, 根乾物重が重く, 胚乳消費率が高かった.苗の葉齢×充実度(茎葉乾物重/草丈)によって算出した苗質指数(SCI)は, 多収品種の方が日本品種よりも有意に高い値を示した.播種後日数(X)と葉齢(Y1)との間にY1=a1+b1X, Xと胚乳消費率(Y2)との間にY2=100-a2・exp(b2X)という関係式が得られた.常数b1(葉齢増加係数, LNC)に品種群間差は認められなかったが, 常数b2(胚乳消費係数, ECC)は多収品種の方が日本品種よりも有意に高かった.SCIはLNCおよびECCと正の相関関係にあった.移植後28日目の地上部乾物重(TW)および葉面積(LA)は, いずれも多収品種の方が日本品種よりも大きかった.SCIとTWおよびLAとの間には有意な正の相関関係が認められた.これらより, SCIが高い多収品種は移植後の葉面積が大きく展開することによって旺盛な初期生育が得られると考えられた.

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