日本作物学会紀事
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葉齢の異なる水稲苗の冠水耐性に関する研究 : 冠水下の生育と生存率との関係
佐々木 良治趙 志超
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キーワード: 移植, イネ, 冠水, 伸長, 炭水化物, , 葉齢
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2000 年 69 巻 3 号 p. 372-379

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抄録

葉齢の異なる4種の乳苗(葉齢2.0~2.7)と稚苗(葉齢3.4)とを移植後10日間完全な冠水下で生育させ, 退水後は10日間(1993年)および15日間(1994年)生育させて生存率を調べた.そして, 冠水下における生育と生存率との関係を調査し, 生存率に関与する要因について検討した.生存率は両年とも乳苗の方が稚苗よりも高く, 特に葉齢2.5の乳苗の生存率が高い傾向にあった.生存率は, 冠水8日間の茎葉乾物重の増加量と正の相関関係(r=0.951*)にあった.また, 冠水処理10日目の草丈の冠水無処理に対する比率は, 生存率と負の相関関係(1993年:r=-0.961*, 1994年:r=-0.890*)にあったが, 試験年次によって回帰直線は異なった.冠水処理開始時に抽出中の葉における冠水処理10日目の葉身長/葉鞘長比は, 生存率と正の相関関係(r=0.757*)にあり, 葉身より葉鞘の方が長く伸びた苗ほど生存率は低下する傾向にあった.そして, 冠水処理10日目の葉鞘長に対する冠水8日間の茎葉乾物重増加量の比率は, 生存率との間に高い正の相関関係にあった(r=0.998***).したがって, 苗間で生じた生存率の差異は, 冠水開始時の葉の発達段階が苗によって異なり, その結果, 冠水下での伸長程度に著しい苗間差が生じたことに加え, 伸長部位への炭水化物供給量が苗間で異なったことが原因と推察された.

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