日本作物学会紀事
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葉齢の異なる水稲苗の冠水耐性に関する研究 : 冠水期間ならびに胚乳養分が移植苗の生育に及ぼす影響
佐々木 良治趙 志超
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2000 年 69 巻 3 号 p. 365-371

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抄録
葉齢の異なる4種の乳苗(葉齢2.0~2.7)と稚苗(同3.4)を供試し, 籾を除去する胚乳除去苗と無処理苗を設けて移植し, 移植後0, 5, 10日間葉先まで水没する冠水下で生育させた.そして, 移植後10日目の生育および同25日目の生存率と総乾物重を比較することにより, 冠水期間や移植時の残存胚乳養分の影響を調査し, 葉齢の増加に伴う苗の冠水耐性の変化を検討した.冠水期間が5日以内であれば, 葉齢の異なる乳苗と稚苗はともに100%生存した.冠水期間を10日とした場合, 草丈の伸長は促進されたが, 逆に根の生長が著しく抑制され, 生存率も低下した.稚苗の生存率は22%であったのに対し, 乳苗の生存率は53~81%であり, 乳苗の方が稚苗より冠水耐性に優れた.乳苗間では, 葉齢2.5(胚乳残存割合22%)の乳苗の生存率が高い傾向にあり, 移植時の胚乳残存割合が高かった若い苗ほど, 冠水耐性に優れるとはいえなかった.また, 胚乳除去処理は, 移植時の胚乳残存割合が35%前後より高い苗の生育を低下させた.一方, この胚乳残存割合よりも低い苗では, 移植後10日間の増加総根長および移植後25日目の総乾物重は, 胚乳除去処理によって低下したが, 草丈の伸長や生存率はほとんど影響されなかった.したがって, これら苗間で生存率に差異が生じた原因は, 残存胚乳養分の多少ではないと推察された.
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