抄録
気候が寒冷で土壌が重粘質で知られる八郎潟干拓地において, 1997年から1998年にかけて, 省力的な水稲の不耕起直播栽培を試みた.酸素供給材(商品名:カルパー)を粉衣した籾で, Y字型播種溝播種機により不耕起圃場へ播種した.尚, 湿田であるので無覆土で栽培した.施肥処理としては硝酸肥料を併用した被覆尿素100日型のCU区と被覆尿素時限式100日型のSCU区と対照の無施肥区を設けた.播種~苗立ち期間の有効積算温度は, 1997年, 1998年がそれぞれ147.6℃, 124.0℃であった.苗立ち率は, 1997年はCU区とSCU区でそれぞれ50.3%, 44.7%に対して, 1998年はそれぞれ35.7%, 35.3%と低い値であった.播種量を多くした結果, 苗立ち数は1997年がそれぞれ166.6本/m2, 148.9本/m2, 1998年は119.0本/m2, 117.7本/m2と, ほぼ好適苗立ち数(50~150本/m2)を確保した.最高茎数は, 1997年が623本/m2, 564本/m2, 1998年は476.7本/m2, 528.9本/m2と, ほぼ500本/m2前後を確保した.玄米収量は, 1997年のCU区が645.3g/m2, SCU区が621.3g/m2であったのに対し, 1998年はCU区が501.3g/m2, SCU区は471.5g/m2と, 1997年より144g/m2~149.8g/m2低下した.これより, 肥料については初期の生育促進を図る施肥法が有効であることと, 収量については年次変動が大きい等の問題点が残されているものの, 八郎潟干拓地でも600kg/10a以上の精玄米収量をあげることが可能である.