日本作物学会紀事
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69 巻, 4 号
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  • 遠山 益
    2000 年69 巻4 号 p. 453-463
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    近年になってBRsに関する分子や遺伝子レベルの研究報告が多くなったが, BRが発見されて30年間の大部分は, BRの農業への応用を目指した試験研究がほとんどであった.基礎研究に裏打ちされていない応用が否定的な結果に終るのは当然というべきである.本総説は作物の成長生理に関する最近の研究を概観して, 作物学研究者のお役に立てることを目的にしたので, 植物生理レベルの広い現象, すなわち, 細胞の成長・分裂, 維管束分化, 花粉と生殖, 老化, ストレス応答, などとBRsとの相関にとどめた.BRsは従来の植物ホルモン5種とはその作用に相異があるようにみえる.すなわち, BRsは植物の成長や細胞分裂などの機能にも関係するほか, 光合成活性, ストレス耐性, 作物の増収効果など, これまでの植物ホルモンの機能を超えた作用をもつようにみえる.しかし, BRsは作物への応用価値がないという早計が生まれたのは, 試験の時期, 場所, 植物種などによって一致した結果が得られなかったからである.したがって, 上記のBRsの諸性質を基礎植物学レベルで再度詳細に追試しなければならない.これまで試験に供したBR, EBR, HBRなどはいずれも細胞内に取り込まれた後間もなく代謝されることもわかってきた.活性持続型のより安定なBRsの開発が望まれる.基礎研究の充実と開発研究とが相まってBRsに再び光のあたることを祈りたい.
  • 中野 尚夫, 平井 幸, 杉本 真一, 冨久 保男
    2000 年69 巻4 号 p. 464-469
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    レンゲ立毛中水稲不耕起播種栽培を継続するとレンゲ植生が経年的に劣化し, 3年も継続するとその植生を前提とする本栽培が不能になるほどに劣化する現象について検討した.この栽培を継続すると, コンバインから地表面に排出された稲わらをレンゲとともに水稲播種前に鋤込む耕起播種栽培を繰り返した場合に比べ, 春のレンゲ草冠被度が著しく劣化し, その劣化は水稲収穫後に地表面の稲わらを取り除くと小さかった.また, 劣化は経年的に大きくなり, 継続3年目には春のレンゲ草冠被度が15%程度になった.春のレンゲ草冠被度は苗立ちレンゲの生存率と高い正の相関関係にあった.そして, 稲わら被覆による物理的障害のなかった本栽培を2年継続した圃場から採取した土壌のレンゲ, あるいは稲わらがレンゲを被覆しないで地表面のみを被覆したポットの移植レンゲも, 幼植物の生育, 特に根部の生育が阻害され, 枯死する個体が生じた.これらのことから, レンゲ立毛中水稲不耕起播種におけるレンゲ植生の劣化は地表面を被覆した稲わらから放出されるアレロパシー物質による生育阻害によって生じたと推察された.また, この栽培を3~4年も継続するとレンゲの苗立ちもやや低下し, 稲わらから放出されるアレロパシー物質によるレンゲの発芽低下も推察された.以上から, この栽培では経年的に, 地表面を被覆するコンバインの排出稲わらが増加し, それに伴って稲わらから放出されるアレロパシー物質が増加し, レンゲは発芽と初期の生育が阻害されて, 植生が低下すると推察された.
  • 中野 尚夫, 平井 幸
    2000 年69 巻4 号 p. 470-475
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    レンゲ立毛中に水稲を不耕起播種する栽培を継続するとレンゲ植生が経年的に劣化する.この原因の1つとして地表面を被覆している稲わらから生育阻害物質が滲出し, レンゲの生育を阻害することが考えられたので, 稲わらを蒸留水で振とうして得た水抽出液がレンゲの発芽・生育・生存に及ぼす影響を検討した.稲わら水抽出液によってレンゲの発芽が阻害された.また, 水抽出液に播種したレンゲは生育, 特に根の生育が阻害され, その濃度が高いと根が伸長せず, 枯死した.プラスチック製トレイの土壌表面に水抽出液を含んだ稲わらを被覆した中に播種したレンゲは水抽出液を含まない稲わらを被覆した場合に比べ生育, 特に根の生育が著しく劣り, 播種21日後には約70%が枯死した.さらに, 土壌表面を風乾稲わらで被覆あるいは被覆しないポットを夏期の間湛水状態にし, 落水20日後に子葉を展開したレンゲを移植した実験では, 前者の生育, 特に根の生育が後者に比べ劣った.これらの事実から, 地表面を稲わらが被覆するこの栽培のレンゲは, 降雨や水稲栽培期間中の湛水によって稲わらから滲出した水抽出物によって発芽や幼植物の生育が阻害され, 生育阻害の著しい場合には枯死に至ることが明らかになった.また, この水抽出物は土壌地表面に残留して経年的なレンゲ植生の劣化をもたらすと推察された.
  • 岡本 毅, 梅崎 輝尚, 長屋 祐一, 谷山 鉄郎
    2000 年69 巻4 号 p. 476-480
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    種イモ生産・供給体制の不備が丹波ヤマノイモの新規産地の拡大を阻む要因になっており, その早急な確立が強く望まれる.そこでGS1Aと新丹丸の2品種を用い, 種イモ生産のための栽培条件として種イモ重と栽植密度を検討した.試験は1997年と1998年に実施した.種イモに適するイモの重量は青果より小さい.青果栽培の条件より種イモ重を小さくするか密植とすれば, 種イモに向く小さいイモが生産できた.種イモの小型化だけでは収量が, 密値化だけでは増殖率が低下した.その問題は両者を組み合わせることで改善された.種イモ生産に最適な種イモ重と栽植密度はGS1Aが20gと10a当たり8333株, 新丹丸が10gと同16667株と考えられた.この条件でGS1Aが4分割, 新丹丸が8分割できる大きさに揃ったイモが収穫できた.収量と増殖率も青果栽培に劣らず, 効率的な種イモ生産が可能となる.
  • 吉永 悟志, 西田 瑞彦, 脇本 賢三, 田坂 幸平, 松島 憲一, 富樫 辰志, 下坪 訓次
    2000 年69 巻4 号 p. 481-486
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    近年, 水稲の湛水土中直播栽培において出芽安定化のために播種後の落水管理が一般に行われてきている.そこで, 播種後の水管理と施肥窒素の動態や水稲の窒素吸収との関係について検討し, 落水管理が水稲の生育・収量へ及ぼす影響を明らかにするための試験を行った.水管理と出芽との関係については本試験においても播種後落水を行うことによる出芽率の向上および初期生育の促進が確認された.苗立ち後の生育は肥効調節型の被覆尿素肥料(LP100)を基肥に施用した場合には播種後の水管理による生育・収量の差は小さかったが, 速効性肥料である硫安を基肥に施用して播種後の落水管理を行った区では硫安施肥を行って湛水管理を行った区に比較して幼穂分化期までの窒素吸収量が低下し籾数不足による減収を生じた.基肥に硫安を施用し播種後落水管理を行った場合には, 初期生育および初期分げつが顕著となるために生育初期の窒素吸収量が顕著に増大すること, また, 落水にともなう施肥窒素の硝酸化成によると推定される土壌中アンモニウム態窒素含有量の低下が生じることが示されたため, これらの要因により幼穂分化期までの窒素吸収量に差を生じたものと推察された.このことから, 播種後落水管理を行う場合には初期の肥効を抑制するとともに, 生育中期の窒素不足を回避するような施肥法を行うことが, 直播栽培における出芽・苗立ちの安定化と生育・収量の安定化の両立に重要となると考えられる.
  • 内村 要介, 尾形 武文, 佐藤 大和, 松江 勇次
    2000 年69 巻4 号 p. 487-492
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲湛水直播栽培における倒伏軽減と良食味米生産技術の確立のため, 水稲茎葉のケイ酸含有率が低い条件下においてケイ酸の施用効果を明らかにした.ケイ酸施用区の水稲は無施用区の水稲に比べて, 稈の強さを表す稈の挫折重が重く, 稲株の地下部の支持力である押し倒し抵抗値が大きくなって, 倒伏程度は小さくなった.収量は, 登熟歩合が向上して増加した.食味は, 味が優れるとともに粘りが強くなって優れる傾向を示した.また, 精米中のタンパク質含有率は低下し, アミログラム特性は最高粘度が高くなった.これらのことから, ケイ酸の施用は, 湛水直播栽培の茎葉のケイ酸含有率が低い水稲に対して, 稈の挫折重を重くして株の支持力を強くすることによる耐倒伏性の向上, 登熟歩合の向上による増収および精米のタンパク質含有率を低下させアミログラム最高粘度が優れることによる食味の向上効果があると考えられる.これらの効果は, いずれもケイ酸64gm-2以上の施用区で顕著に認められた.
  • 丹野 久, 木下 雅文, 木内 均, 平山 裕治, 菊地 治己
    2000 年69 巻4 号 p. 493-499
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1998, 1999年の2ヵ年に北海道の水稲新旧52品種について開花期耐冷性の評価を行った.縦15×横5×高さ10cmの方形ポットに主稈8本栽培したものを材料に, 1品種3~4ポットを50%遮光幕付人工気象室で出穂日より17.5℃で15日間処理を行い, 最少で10穂の稔実歩合により判定する簡易な方法で検定した.その結果, 「はやゆき」, 「はやこがね」が最も強く強~極強, 「赤毛」, 「ふくゆき」, 「うりゅう」, 「ほしのゆめ」, 「初雫」の5品種が強, 「富国」, 「早生錦」, 「しまひかり」が最も弱く弱~極弱であった.開花期耐冷性(冷温処理区の不稔歩合)と穂ばらみ期耐冷性(従来の評価.以下, 耐冷性評価には極強:2~極弱:8を当てはめ相関係数を算出した)との間にはr=0.541(n=52, 以下同じ)の有意な正の相関関係が認められた.また, 育成年次が新しい品種ほど穂ばらみ期耐冷性が強い傾向が認められたが(育成年次と従来の穂ばらみ期耐冷性評価の間にr=-0.366), 開花期耐冷性とは一定の関係がみられず(育成年次と開花期耐冷性評価との間にr=-0.055ns), 育成品種の開花期耐冷性を向上させるためには育種の場で直接選抜することが必要であると考えられた.さらに, 穂ばらみ期耐冷性が極強か極強に近いと評価されている北海道の耐冷中間母本7系統と耐冷育成系統の30系統, 計37系統の開花期耐冷性を検定したところ「永系88223」と「北育糯87号」の2系統が2ヵ年とも極強と判定された.これらの2系統は系譜の上から穂ばらみ期だけでなく開花期においても「はやゆき」に由来する耐冷性を持つことが推察された.
  • 渡部 富男, 在原 克之, 西川 康之
    2000 年69 巻4 号 p. 500-507
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    千葉県農業試験場で1995年に開発した早生で, 耐冷性が強く, しかも玄米千粒童が「はなの舞」より1~1.5g重い, 良質で良食味である「ふさおとめ」の特性を充分に引き出せる収量目標及び生育目標値と施肥法等を明らかにした.10a当たり収量目標は砂質・壌質土で540~600kg, 粘質土で540~570kgとした.この目標収量を得るために必要な籾数は砂質・壌質土では28, 000~32, 000粒/m2で, 穂数は砂賀土で, 480~510本/m2, 壌質土で450~480本/m2であった.また, 粘質土での必要籾数は28, 000~30, 000粒/m2, 必要穂数は470~500本/m2であった.この穂数を確保するためには, 幼穂形成期におけるm2当たり必要茎数は, 砂質土で590~650本, 壌質土で530~620本, 粘質土で570~620本で, そのための10a当たり基肥窒素施肥量は, 砂質土では4~5kg, 壌質土で3~4kg, 粘質土で1~2kgで, 出穂期前18日の10a当たり穂肥窒素施用量は砂質土, 壌質土で3kg, 粘質土で1~2kgであった.なお, 移植時期は倒伏程度, 精玄米収量, 玄米の外観品質から4月末頃までが適期であった.
  • 吉岡 秀樹, 川越 博
    2000 年69 巻4 号 p. 508-512
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1992年から1998年までの7年間, 宮崎県総合農業試験場で早期水稲品種「コシヒカリ」と「きらり宮崎」を栽培し, 出穂に及ぼす気象要因の影響を検討した.移植期から出穂期までの生育期間を3相に分けて検討した結果, 出穂の早晩はコシヒカリではII相(分げつ始期から幼穂形成始期まで)において気温の影響を最も強く受けた.一方, きらり宮崎ではI相(移植期から分げつ始期まで)およびII相においてその影響を強く受けた.II相の平均気温と出穂日数との相関関係は分げつ始期後の3半旬から幼穂形成始期前の2半旬において認められるが, コシヒカリはII相の前半で高く, きらり宮崎は連続して後半まで高かった.1998年はI相およびII相が高温で経過して各生育相の日数が極めて短くなり, 特にコシヒカリでその短縮程度が大きかったため, 1998年のコシヒカリときらり宮崎との間に出穂期の逆転現象が現れたものと推察された.
  • 角 明夫, 片山 忠夫
    2000 年69 巻4 号 p. 513-519
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ソルガムを窒素施用量と土壌水分含量ならびに日射量と土壌水分含量を複合的に変えた育苗箱条件下で栽培し, 土壌水分に対するソルガムの初期生育反応に及ぼす窒素施用量と日射量の影響について調査した.ソルガムの生育に対して基本的に土壌水分含量は生長促進作用としての線形要因的性格と阻害作用としての逆数要因的性格とを併せ持つ両性要因として作用するが, 最適土壌水分含量未満の範囲においては土壌水分の過剰による生育抑制項を欠いた逆数式で対応できた.窒素施用量は低土壌水分条件下では両性要因として作用したが土壌水分含量の増大に伴って逆数要因的特性が不明確となった.これらの関係は, 1/〓W=A/(f-f0)+B(g+g0)/(f-f0)+C/[(f-f0)(g+g0)]+D/(g+g0)+Eで近似できた.ここで, 〓W, fおよびgはそれぞれ全乾物増加量, 土壌水分含量, 窒素施用量, f0とg0は非有効土壌水分含量の上限値と土壌および種子からの窒素持ち込み量, またA, B, C, DとEは係数である.日射量は生育量に対して線形要因として作用し, 土壌水分含量と日射量を変えた複合条件下におけるソルガムの生育量は, 1/〓W=A/(S-S0)+B/(f-f0)+C(f-f0)+Dで近似できた.ここで, SとS0は日射量と日補償点である.以上の結果は, 日射量と土壌水分含量の影響はそれぞれ単独効果の和として表せるのに対して, 窒素施用量と土壌水分含量の複合条件下では両要因の交互作用効果が無視できないことを示している。また, 蒸散効率に対する土壌水分含量, 窒素施用量および日射量の影響は大きくないと考えられた.
  • 鄭 紹輝, 綿部 隆太
    2000 年69 巻4 号 p. 520-524
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ20品種の無処理と老化処理種子(40℃, 相対湿度100%条件で6日放置後室内風乾)について, 20℃24時間浸水後の種子から溶出した糖(フルクトースとグルコース)の量および異なる土壌水分条件(土壌含水率:適湿区13%, 過湿区20%)における出芽率を測定し, 両者の関係を検討した.無処理種子からの糖の溶出量は種子1g当り0.4mg(もやし豆)から11.8mg(シロタエ)まで, 品種によってかなり異なったが, 老化処理種子ではほとんどの品種において増加し, 無処理種子より最高約5倍も多い糖を溶出した.種子からの糖溶出量は, 種子の大きさと有意な正の相関関係がみられ, 種子の老化処理の有無にかかわらず黄色品種で顕著に多かった.出芽率は無処理種子では土壌湿度条件の如何に関わらず良好であったが, 老化処理種子では適湿区で-部の品種, 過湿区で大多数の品種において明らかに低下した.さらに, 出芽率と種子からの糖溶出量の問には, 過湿区において有意な負の相関関係がみられ, 種子からの糖溶出は, 特に老化処理・過湿区で出芽に深く関わっていることが示唆された.なお, 本実験に供試した黒色の4品種においては, 老化処理種子からの糖溶出量が少なく, 過湿区における出芽率も他の品種より高く, 種子の活力が低下しにくい性質を持っているのではないかと考えられた.
  • 杵渕 覚, 濱村 邦夫
    2000 年69 巻4 号 p. 525-529
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    メロンの葉内水分状態を葉色から推定することを目的として, 葉色値と葉の水分ポテンシャルを経時的に測定した.葉色値と葉の水ポテンシャルは共に日変化した.葉色値は日中に増加し, 夜間に減少した.他方, 葉の水ポテンシャルは日中に減少し, 夜間に増加した.両者は高い負の相関関係にあった.相関関係は日中より夜間で高く, 若い葉より古い葉で高かった.これは若い葉で日中に葉緑素が新たに形成されるためと考えられた.葉色と葉の水ポテンシャルとの間に密接な相関関係が認められたので, 品種特性, 窒素施用量, 日射量などを考慮した上で, 葉色を指標とするメロンの体内水分の推定とそれに基づくかん水量制御が可能になると考えた.
  • 山内 正見, 吉田 弘一, 谷山 鉄郎, 梅崎 輝尚, 長屋 祐一
    2000 年69 巻4 号 p. 530-534
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水質汚濁防止法による公共用水域に排出されるフッ素の許容濃度は15mg L-1であるが, 5~10ppmのフッ素を含む培養液による水耕栽培でイネの生育は著しく抑制された.そこで水耕栽培で許容濃度内である低濃度域のフッ素がイネの生育に及ぼす影響を検討し, イネの経根的吸収によるフッ素の蓄積を明らかにしようとした.フッ素濃度が0, 2, 4および6ppmの4水準の水耕液でコシヒカリを栽培し, イネの生育に及ぼすフッ素の影響を検討した.その結果, フッ素はイネの草丈および分げつ数を抑制した.とくに分げつ数はフッ素の濃度による影響の差異が明確に認められ, フッ素濃度が高いほど分げつ数が低下することを明らかにした.1株当り穂数および1株当り籾数もフッ素濃度が高いほど減少した.また, 籾, 葉身, 葉鞘(稈を含む)および根に及ぼす影響は出穂期以降が顕著で, フッ素濃度が高いほど乾物重は減少した.葉身中のフッ素含量(ppm, w/w)は培養液中のフッ素濃度が高くなるほど, また生育期間が長くなるほど増大し, 経根的に吸収されたフッ素は玄米, 葉身, 葉鞘(稈を含む)および根に蓄積されることがわかった.
  • 山内 正見, 吉田 弘一, 谷山 鉄郎, 梅崎 輝尚, 長屋 祐一
    2000 年69 巻4 号 p. 535-539
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    フッ素2ppmを含む培養液を用いた水耕栽培でイネの生育は抑制され, 根から吸収されたフッ素はイネの体内に蓄積された.フッ素の土壌による吸収力は特異的に大きいことが知られている.そこで土耕栽培によるイネの生育に及ぼすかんがい水中フッ素の影響を検討した.水稲品種コシヒカリの土耕栽培ではフッ素濃度が0, 5, 10, 20, 30, 50および100ppmの7水準のかんがい水を用いた.その結果, 土耕栽培においてフッ素5~30ppmのかんがい水はイネの出葉, 草丈および分げつ数にほとんど影響を及ぼさなかったが, フッ素50および100ppmのかんがい水は分げつ数を抑制することが明らかとなった.フッ素100ppmの上位第2および3葉の光合成速度は低下したが, 葉身中のクロロフィル含量に影響はみられなかった.1株当り穂数および1株当り籾数はフッ素50ppmで低下の傾向を示し, フッ素100ppmで有意に減少した.籾および葉鞘(稈を含む)の乾物重はフッ素50および100ppmで有意に低下することがわかった.
  • 神田 英司, 鳥越 洋一, 小林 隆
    2000 年69 巻4 号 p. 540-546
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲冷害の早期警戒システムにおいて東北全域の生育監視に適用する止葉展開期までの発育ステージを葉齢で予測するモデルを作成した.本モデルでは, 主稈葉齢が1進むのに必要な10~24℃の有効積算気温を出葉間隔とした.葉齢増加による出葉間隔の転換点を主稈葉齢9.1と11.1とし, 3時期に分割した.出葉間隔はPhase Iは一定, Phase IIでは一定の割合で拡大し, Phase IIIで再び一定とする.葉齢は出葉間隔に基づいて, 日々の葉齢進度を積算して推定する.東北の基幹12品種のうち, 1997年と1998年の7品種の盛岡における出葉経過からモデルのパラメータを決定した.本モデルによる推定葉齢と実測葉齢を1999年の盛岡について比較すると, 「おきにいり」を除いた11品種で誤差平均が0.25葉, 日数に換算すると1.7日であった.作成したモデルを宮城県松山町と山形県最上町の農家圃場で検証したところ, 予測精度は比較的高かった.ただし, 出葉間隔は分げつの影響も受けるため, 初期に分げつ形成が旺盛な生育型では予測精度が低くなった.
  • 田代 卓, 菅原 修, 長野間 宏, 千葉 和夫, 三枝 正彦
    2000 年69 巻4 号 p. 547-553
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    気候が寒冷で土壌が重粘質で知られる八郎潟干拓地において, 1997年から1998年にかけて, 省力的な水稲の不耕起直播栽培を試みた.酸素供給材(商品名:カルパー)を粉衣した籾で, Y字型播種溝播種機により不耕起圃場へ播種した.尚, 湿田であるので無覆土で栽培した.施肥処理としては硝酸肥料を併用した被覆尿素100日型のCU区と被覆尿素時限式100日型のSCU区と対照の無施肥区を設けた.播種~苗立ち期間の有効積算温度は, 1997年, 1998年がそれぞれ147.6℃, 124.0℃であった.苗立ち率は, 1997年はCU区とSCU区でそれぞれ50.3%, 44.7%に対して, 1998年はそれぞれ35.7%, 35.3%と低い値であった.播種量を多くした結果, 苗立ち数は1997年がそれぞれ166.6本/m2, 148.9本/m2, 1998年は119.0本/m2, 117.7本/m2と, ほぼ好適苗立ち数(50~150本/m2)を確保した.最高茎数は, 1997年が623本/m2, 564本/m2, 1998年は476.7本/m2, 528.9本/m2と, ほぼ500本/m2前後を確保した.玄米収量は, 1997年のCU区が645.3g/m2, SCU区が621.3g/m2であったのに対し, 1998年はCU区が501.3g/m2, SCU区は471.5g/m2と, 1997年より144g/m2~149.8g/m2低下した.これより, 肥料については初期の生育促進を図る施肥法が有効であることと, 収量については年次変動が大きい等の問題点が残されているものの, 八郎潟干拓地でも600kg/10a以上の精玄米収量をあげることが可能である.
  • 森田 茂紀
    2000 年69 巻4 号 p. 554-557
    発行日: 2000/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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