日本作物学会紀事
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段階的な水位上昇処理が水稲分げつの生長に及ぼす影響
菅井 恵介後藤 雄佐斎藤 満保
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2001 年 70 巻 1 号 p. 23-27

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抄録

段階的に水位を上げる処理が水稲分げつの生長に及ぼす影響を,処理開始時の分げつ齢の差異に着目して解析した.主茎葉齢7.5の時に主茎第7葉の葉節を水没させ,その後,主茎葉齢が1進むごとに,その時点での最上位葉の葉節を水没させる処理を行った.主茎と分げつの生長の指標として,本来,個体の大きさと齢を表すために用いる草丈と葉齢とを個々の分げつの大きさと齢を表すために用いた.草丈は,深水処理開始時に出現していた2号分げつ(T2)とT3,T4では深水処理開始後6日目から,処理開始後に出現したT7では18日目から,深水処理区で高くなり,主茎の草丈の推移における傾向と類似した.T2,T3,T4の葉齢は主茎葉齢の推移と同様に35日目から対照区より深水処理区で進んだが,T7の葉齢では区間差が認められなかった.T2,T3,T4の相対葉齢差は対照区より深水処理区で小さかったが,その区間差は深水処理開始時の生育段階が若い分げつほと大きかった.主茎と各分げつとの葉齢の推移と止葉葉位との関係から幼穂形成開始期を推定した.主茎では幼穂形成開始期に区間差が認められなかったが,T2,T3,T4,T7では深水処理により幼穂形成開始期が遅れる傾向が見られた.さらに,対照区では主茎と各分げつとでほぼ同時期に幼穂形成を開始したと見られたが,深水処理区では各1次分げつの幼穂形成開始期は主茎より遅れた.以上から,段階的深水処理に対する分げつの反応は処理開始時における生育段階によって異なることが明らかとなった.

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