日本作物学会紀事
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水稲乳苗における移植前低温貯蔵が苗の内部形態におよぼす影響
新田 洋司山本 由徳河村 剛英関野 亜紀松田 智明
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2001 年 70 巻 1 号 p. 17-22

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抄録
水稲の移植栽培における一層の効率化の1方法として,乳苗の移植前貯蔵が考えられる.本研究では,乳苗の低温貯蔵による苗素質の変化を内部形態の光学顕微鏡観察により形態学的に検討した.乳苗を5.0℃で貯蔵すると,育苗終了時の乳苗(無貯蔵苗)に較べて,葉鞘が薄くなり,第2節分げつの形成が劣ったが,冠根原基数は多くなる傾向にあった.10.0℃および12.5℃での貯蔵では,茎の長さや大きさ,葉鞘の厚さ,分げつ芽の有無や大きさ,および葉鞘や茎の内部組織・細胞の形態は無貯蔵苗と変わらず,冠根原基の数は多くなった.そして,貯蔵した苗を移植すると,貯蔵中に増えた冠根原基が出現に至ることが確認された.これらのことから,乳苗は貯蔵すると無貯蔵に較べて冠根原基の数が増えることが明らかとなった.また,10.0℃および12.5℃で貯蔵した苗は,茎,葉鞘,分けつ芽等の形質は無貯蔵苗と変わらないまま冠根原基数が増えるため,無貯蔵苗よりも内部形態的な素質が優れるものと考えられた.
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