抄録
1999年の夏は全国的に気温が高く推移し, 水稲の収量は平年並みであったが, 一部の地域を除いて米品質の低下が認められた.とくに, 東北や北陸地域では登熟期前半の高温の影響が著しく, 乳白粒, 背白粒等が多発し, 1等米比率が秋田や宮城, 新潟の各県で50%以下と大幅に低下した.その被害は従来品質が優れるとみられてきた品種にまで及んだ.九州では登熟期の高温に加えて寡照条件が長期にわたって持続し, 収量の減少と外観品質や食味の低下を招いた.一方, 千葉県では高温下の登熟に対応した栽培管理, 高温耐性の強い品種の育成と普及が被害の軽減に寄与した.こうした1999年における水稲の生育と被害の状況, これに関連した気象要因, 品種, 栽培条件を解析し, 作物学分野に関連した今後の研究課題について検討を行った.