日本作物学会紀事
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水稲苗代期の低温障害に関する研究 : 低温処理が根の生長および出液速度に及ぼす影響(形態)
楊 知建佐々木 修下田代 智英中釜 明紀
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2001 年 70 巻 4 号 p. 561-567

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抄録

中国湖南省のインド型水稲の二期作地帯では第一作目の育苗期の苗の低温障害が栽培上大きな問題である.そこで現在普及しているインド型品種(浙9248,湘24号)と低温抵抗性の異なる日本型I品種(コシヒカリ)および日本型II品種(胆振早稲,はやゆき)を供試し,育苗期における根の生長に対する低温の影響を調べた.処理温度は8,11,14℃とし,低温処理時および常温(20℃)回復後における根の生長と出液速度を測定し,低温下における各品種の根の生長反応と生理活性の関係について検討した.低温時においてはいずれの品種も低温強度が強いほど,また低温期間が長いほど根の生長および出液速度は抑制されたが,その抑制程度には品種間差が認められ,日本型II品種に比較してインド型品種および日本型I品種で抑制が大きかった.また,出液速度は低温の継続に伴ってインド型品種および日本型I品種で急激に低下したのに対し,日本型II品種では低下がほとんど見られず,根の生長限界温度である8℃においても処理開始時の出液速度が維持された.一方,常温回復後の根の生長および出液速度の回復は,低温強度が強いほど,また低温期間が長いほど遅れる傾向を示したが,遅れの程度は品種によって異なり,インド型品種で最も大きく,日本型I品種,日本型II品種の順に小さかった.とくに低温時における出液速度の大小と常温回復後の出液速度および根の生長回復との間には密接な関係が認められ,日本型II品種と比較して低温時における出液速度が劣るインド型品種と日本型I品種では出液速度および根の生長の回復も著しく劣っていた.以上のことから,低温ストレス下における根の生理活性の維持能力に品種間差があり,それが高く維持される品種ほど常温回復後の生理活性の回復が速く,このことが品種による根の生長回復量の差となって現れたのではないかと考えられた.

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