2001 年 70 巻 4 号 p. 575-579
サツマイモ植物体へ6%濃度のスクロース溶液を供給することによってシンク・ソースバランスを人為的に変化させ,それが葉から塊根への光合成産物の転流に及ぼす影響を確認するとともに塊根生産向上に最も効果的なスクロース溶液供給時期を検討した.その結果,スクロースを供給すると光合成産物の根への分配率が高まることが13CO2フィーディング実験により明らかとなった.塊根形成開始直前期のスクロース溶液の供給が塊根肥大に最も効果的であり,塊根内のADPグルコースピロホスホリラーゼ(AGPase)の活性が上昇した.一方,塊根肥大開始後の供給には効果がみられなかった.適期に植物体に供給されたスクロースは速やかに転流して根部の糖濃度を高め,それが引き金となってAGPaseなどのデンプン合成関連酵素の活性が高まり,シンク能が向上したものと考えられる.これによって塊根への光合成産物の転流が促進され,塊根生産が増加する結果となったものと理解される.シンク能向上に果たすソース能の役割の重要性が指摘された.