抄録
わが国では香り米の栽培は面積,品種数とも激減したが,外国では南,東南アジア諸国を中心に広く栽培され,輸出も行われている.近年,わが国でも香り米のブレンドによる食味改善効果に注目した育種が始まっており,香り米に関する知見の整理は急務である.本研究では日本産香り米品種71,外国産香り米品種21および普通米新品種18の計110品種を同一条件下で栽培し,収量(1株籾重)および収量関連形質ならびに芒性,着色性を調査した.さらに,日本産香り米品種44および普通米旧品種6,普通米新品種12の計62品種を栽培して,葉の形質を調査した.その結果,(1)日本産香り米品種は,普通米新品種に比べ長稈・穂重型で,わら重は大きいが収穫指数が低く,籾重も低かった.また,多芒,着色籾の例が多かった.(2)日本産香り米品種は,形態的に東北,関東・北陸産を含む東日本産品種と近畿,四国,九州産を含む西日本産品種の2群に分かれた.前者は後者に比べて早生,短稈,小穂,少収,細茎,倒伏易であった.(3)外国産香り米品種は,日本産香り米品種と同様,長稈,穂重型で籾重も低いが,日本産より晩生で,穂は長く,1株全重,籾重ともに低く,収穫指数も低かった.(4)日本産香り米品種は普通米新品種に比べ止葉が大型で着生角度が大きく,早く退色し,穂も止葉から長く抽出した.普通米旧品種は,香り米と新品種との中間的な値を示した.(5)香り米品種は古い時代のイネが持っていたであろう形質を多く残し,かつ変異に富むので,栽培や育種母本としての選択には十分な検討が必要である.