抄録
コムギ3品種を用いて,1個体内における着生粒のタンパク質含有率を節位別の分げつごとに検討するとともに,播種時期ならびに窒素追肥が節位別の分げつ着生粒のタンパク質含有率に及ぼす影響を明らかにした.節位別の分げつ着生粒のタンパク質含有率は1個体内の分げつの発生位置により大きく異なった.タンパク質含有率を分げつの次位別でみると二次分げつは一次分げつに比べて高く,節位別では上位節位の分げつは下位節位の分げつに比べて高かった.そこで,節位別の分げつ着生粒のタンパク質含有率,出穂日および1穂粒重,それぞれの相互関係を検討すると,タンパク質含有率は出穂日が遅いほど高く,また1穂粒重が軽いほど高く,さらに1穂粒重は出穂日が遅いほど軽くなるという関係が認められた.この結果から,節位別の分げつ着生粒のタンパク質含有率の違いは,分げつの発生位置と密接な関係のある出穂の早晩に起因する粒への炭水化物の蓄積量の差異による影響と考えられた.播種時期,窒素追肥と節位別の分げつ着生粒のタンパク質含有率との関係では,晩播と標準播種期の差は明確でなかったものの,早播は標準播種期に比べて穂数の増加による各節位別の分げつへのタンパク質含有量の蓄積量の減少と千粒重の増加による炭水化物の蓄積量の増加のため,相対的にタンパク質含有率が低くなった.窒素追肥の増量によるタンパク質含有率の増加の効果は,分げつの次位別,分げつの発生節位によって異なり,二次分げつと上位節位の分げつで大きくなった.