日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
直播水稲における一株の生育量と耐ころび型倒伏性との関係
寺島 一男酒井 究椛木 信幸
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 71 巻 2 号 p. 161-168

詳細
抄録

水稲における一株の生育量の違いが耐ころび型倒伏性に及ぼす影響の要因を明らかにする目的で,耐ころび型倒伏性の異なる水稲2品種を同一,あるいは異なる密度条件で栽培し,出穂期に各株の地上部,地下部の生育量と押し倒し抵抗を測定して相互に比較を行った.耐ころび型倒伏性に関する倒伏指数[(草丈×地上部重)/(測定高×押し倒し抵抗)]は,高密度条件下で生育した株や同一密度条件においても穂数の少ない株で高い値となり,生育量の小さな株で耐倒伏性が低下する傾向が認められた.この傾向は,耐倒伏性の異なる品種を比較した場合や,不織布を埋設して心土層への根系の発達を制限した圃場で比較した場合においても同様であった.地上部重に対する根重の比率は穂数の異なる株間で大きな差異を示さなかったことから,穂数の少ない株での倒伏指数の低下を根重の変動のみから説明することは困難であった.一方,単位根重当たりの押し倒し抵抗は穂数の少ない株や高密度条件で生育した株で低く,単位根重の株支持力に対する効率が生育量の小さな株で低下する傾向が認められた.この点について,株基部に作用する根の支持力が地上部モーメントと同様にトルクとして働くと仮定して解析を加えた.その結果,生育量の小さな株で耐倒伏性が弱まるのは,根重が少ないだけでなく,根の支持力の作用点と倒伏時の回転の中心との距離も短くなり,両者の積で推定される株支持力のモーメントがより顕著に低下するためと推察された.

著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top