日本作物学会紀事
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植物成長調節物質の葉面散布が塩水湛水条件におけるイネの1穂穎花数に及ぼす影響
横山 知紗津田 誠平井 儀彦
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2002 年 71 巻 3 号 p. 376-382

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抄録

塩ストレス条件下のイネ収量を改善するために,植物成長調節物質の葉面散布によって塩ストレスに対する1穂穎花数(SN)の反応がどう変わるかを調べた.塩ストレスによってSNが減少する水稲品種IR28をポットで土耕栽培し,穎花分化始期から出穂期まで3段階の塩水(塩化ナトリウムで50,100,150mM)および水道水で湛水する区,これらに0.5mMのインドール酢酸(IAA),カイネチンおよびジベレリン(GA3)を葉面散布する区,また同じ期間に40%から85%の日射量制限する区を設けた.対照区は水道水湛水し,植物成長調節物質の散布および日射量制限を行なわない植物とした.塩水湛水では退化穎花と内外穎に形態異常のある穎花の増加,日射量制限では退化穎花のみの増加にともないSNが低下した.塩水湛水の植物にGA3を散布すると退化穎花数は減少したが,GA3散布独特の形態異常が起こり,SNは低下した.地上部における穎花分化始期から出穂期までの乾物重増加の抑制にともない出穂期の穂乾物重(Wp)は低下し,SNはWpの低下に比例して低下したが,両者の関係は塩水湛水,GA3散布および日射量制限で異なっていた.IAAとカイネチン散布の影響は,観察されなかった.以上の結果から,塩ストレスは穎花の退化とともに内外穎の形態異常を起こすためSNを大きく低下させることが分かった.またGA3散布は退化穎花数を減少させるので,塩ストレス下のSN制御にGA3を使用する可能性があると示唆された.

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