日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
西日本暖地で栽培した北海道育成コムギ品種ハルユタカの物質生産と群落構造との関係
高橋 肇島内 佳奈恵中川 悠子柴田 香織飯山 豪
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 71 巻 4 号 p. 481-487

詳細
抄録
要旨 : 山口で栽培した北海道育成コムギ品種ハルユタカの開花後の個体群成長速度(CGR)が極めて低くなることに着目し,その原因を解析した.1997~2001年に九州育成のダイチノミノリを比較対照品種として成長解析を行い,草姿,葉面積指数,穂の表面積指数および光合成有効放射(PAR)の群落内部への透過率との関係について調査・検討した.各葉位での葉身の光合成速度についても比較した.その結果,ハルユタカは,各栽培年次とも登熟期間(開花期~成熟期)のCGRおよび純同化率が極めて小さくなった.この原因の一つは,ハルユタカがダイチノミノリに比べて穂や止葉,第2葉といった群落上層に位置する器官の表面積が大きく,群落内部へのPARの透過率が低いためであると考えられた.さらに,ハルユタカは全表面積指数がダイチノミノリよりも高く,群落の同化器官が過繁茂の状態であると推察された.群落条件において葉位別に光合成速度を測定したところ,ハルユタカは登熟期間,とくに登熟後半の光合成速度が大きく低下していた.
著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top