日本色彩学会誌
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日本色彩学会誌 第40巻 第1号
ブリティッシュカラーカウンシルの刊行物における色彩の表記の独自性
日髙 杏子
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 40 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

ブリティッシュ・カラーカウンシル(BCC)は,1930 年代から1950 年代に活発に出版物を発行した色彩標準化団体であった.これらの精緻な出版物は,独自な色名法と表色系に特徴づけられる.1956 年に,刊行物の一つで第2 版が発行された後,組織は経営停止し,現在は消息不明である.本研究では,BCC による5 種類の刊行物を調査し,その独自性を分析する.BCC の方針はアメリカやドイツ由来の定量的表記を避けつづけ,イギリス独自の表色系を作ろうとしていた点で,イギリスの政治的孤立主義の影響が推測できる.色名,特殊コードや番号の使用,色彩用語「ティントとシェード」の解釈,ブラウンスケールの導入は,BCC の独自な方向性を裏づけている.しかしながら,BCC の色彩の表記は,グローバルスタンダードとしての確立に躓いていた.1953 年に英国規格協会(BSI) によるマンセル表色系の導入,さらに1969 年にインペリアル・ケミカル・インダストリーズ(ICI) によるカラーアトラスの発行は,BCC の閉鎖を招いた可能性がある.

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© 2016 一般社団法人 日本色彩学会
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