2017 年 41 巻 6+ 号 p. 9-11
須長ら(2017)は,3色覚でも強度異常3色覚でも知覚可能なS錐体刺激値の差分のみを手がかりとした視覚探索課題において,強度異常3色覚が3色覚よりも短い時間で目標刺激を検出できる色条件が存在することを示した.本研究では,須長らが報告した現象に対する色弁別能の影響を妨害刺激の色数を変えることによって検討することを目的とした.実験は,13個の円盤が刺激としてモニタに呈示され,行われた.円盤には,目標刺激となる1色が1個に,妨害刺激となる2色が6個ずつに,もしくは2色のうち1色が12個に割り当てられた.目標刺激と妨害刺激は,S錐体刺激値のみが異なった.本研究では,12個の妨害刺激に1色を割り当てた視覚探索の検出時間を色弁別特性と見做した.刺激は,呈示時間をパラメータとして,被験者に呈示された.被験者の課題は,目標刺激がどの象限にあったかを回答することであった.正答率が0.724となる呈示時間を呈示時間閾値とした.呈示時間閾値は,どの色覚特性でも,妨害色2色よりも妨害色1色の方が短くなった.このことから,須長らの実験結果では単に色弁別能だけが働いていたわけではないことが示唆された.