日本色彩学会誌
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41 巻, 6+ 号
日本色彩学会平成29 年度研究会大会 6 研究会合同研究発表会発表論文集
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
Supplement
  • 三原 優輝, 溝上 陽子
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 1-2
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     色覚異常には様々なタイプや程度があると言われている.現在のところ色覚異常の強度を測定するには,専門機関に行ったり,特殊な機器が必要だったりすることから,個人の色覚異常の強度を知ることは困難である.特殊な装置を使わずに個人の色覚異常の強度を簡便に測定することができれば,色覚異常者が各々の強度を把握することができ,またその強度に適した色覚補正を提供することが可能になる.そこで本研究では新しい測定手法を提案し,ここで用いる実験手法が,色覚異常の強度測定に有効かどうかを検証する.その結果をもとに,より簡単な測定手法を提供する可能性を検証する.本研究では,多数の1 型,2 型被験者を対象に,ディスプレイを用いた色弁別実験を行った.この実験によって,混同色線上における弁別閾を測定した.その結果,アノマロスコープによる色覚異常の判定が強度であるほど弁別閾が大きい傾向が得られた.これらの結果から,誰でも簡単に色覚異常の強度を測定できる手法を提供できる可能性が示唆された.

  • 安井 明代, 田中 豪
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 3-6
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

    色を情報伝達手段として用いる際,その配色は正常3色覚を前提としている場合が多いが,2色覚においても弁別可能な配色であるかを正しく知ることは重要である.2色覚の色の見えモデルとしてよく用いられるものに,Brettelらのモデルがある.吉澤らは,Brettelらのモデルに色順応過程を加えたモデルを提案した.彼らは異なる照明下で大きな色差をもつ複数の色票を測色し,それらについてBrettelらのモデルと吉澤らのモデルを用いて2色覚の色の見えでの色差を求める実験を行い,後者の優位性を示した.筆者らは以前,人が見分けられる色の限界(色弁別閾)について心理物理学的実験を行い,両モデルの色弁別閾に関する正確性を検討した.この実験ではディスプレイの色温度を6,500Kとし,両モデルから計算される色弁別閾について相関係数により比較したところ,両モデルに有意な差はみられなかった.しかし,異なる条件では差異が生じる可能性がある.今回は印刷物取扱い時に推奨されているディスプレイの色温度である5,000Kにて両モデルの比較検討を行った.実験結果より,今回の実験条件でも両モデルに有意な差はみられなかった.

  • 井澤 尚子, 片山 一郎, 山内 泰樹
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 7-8
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

    本研究は,正常色覚者が色弱模擬フィルタを装着した場合の白色度評価と,色覚異常者の白色度評価結果の比較検討を目的とした.実験には白色点を標準イルミナントD65の色度に一致するように調整した液晶カラーディスプレイを用い,12種類の近似白色刺激を正常色覚女性15名に呈示した.呈示刺激は,色相がマンセル表記で10PB,3PB,5B,7BG,9G,3G,3GY,5Y,4YR,4R,7PおよびN,明度がマンセル表記で9.5,無彩色刺激Nを除いてマンセル彩度が0.25となるように,色彩輝度計を用いて調整した.刺激の視野角は約4度で,N7相当の無彩色背景上に呈示した.さらにP型,D型の色弱模擬フィルタを装着してもらい,同じ評価実験を同じ方法で行った.結果,色覚異常者,色弱模擬フィルタ装着時の正常色覚者のいずれも緑から黄緑,黄の色相の刺激に対して知覚白色度が低く評価される傾向が見られた.また,正常色覚者に比べ色覚異常者,色弱模擬フィルタ装着時の場合は,青から緑の評価が高く,黄から赤の評価が低い傾向にあった.これらのことから,光学フィルタを用いて,色覚異常者の白色度評価の傾向を再現できることが明らかとなった.

  • 菱川 優介, 桂 重仁, 須長 正治
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 9-11
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     須長ら(2017)は,3色覚でも強度異常3色覚でも知覚可能なS錐体刺激値の差分のみを手がかりとした視覚探索課題において,強度異常3色覚が3色覚よりも短い時間で目標刺激を検出できる色条件が存在することを示した.本研究では,須長らが報告した現象に対する色弁別能の影響を妨害刺激の色数を変えることによって検討することを目的とした.実験は,13個の円盤が刺激としてモニタに呈示され,行われた.円盤には,目標刺激となる1色が1個に,妨害刺激となる2色が6個ずつに,もしくは2色のうち1色が12個に割り当てられた.目標刺激と妨害刺激は,S錐体刺激値のみが異なった.本研究では,12個の妨害刺激に1色を割り当てた視覚探索の検出時間を色弁別特性と見做した.刺激は,呈示時間をパラメータとして,被験者に呈示された.被験者の課題は,目標刺激がどの象限にあったかを回答することであった.正答率が0.724となる呈示時間を呈示時間閾値とした.呈示時間閾値は,どの色覚特性でも,妨害色2色よりも妨害色1色の方が短くなった.このことから,須長らの実験結果では単に色弁別能だけが働いていたわけではないことが示唆された.

  • 豊田 敏裕, 門奈 哲也, 鈴木 敬明, 小浜 朋子
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 12-14
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     【目的・背景】ソムリエは,ワインを視覚的に評価する際,ワイングラスを傾けて,白い紙など高反射率の背景にかざした時に液面に現れるグラデーションなどからワインの産地や品質を確認している.この一連の評価について,分光測色によりその意味について考察した.【方法】ソムリエが色合いを分類した5種類の赤ワイン(ガーネット系3種類,ルビー系2種類)を試料とした.まず,厚さ10mmの光学セルを用いて分光透過率を測定し,CIELAB値(D65,2度視野)を求めた.次に,透過率の低いガーネット系の試料(3種類)を,精製水(イオン交換水)で2倍,4倍,8倍,16倍に希釈した試料を用いて,光学濃度の変化を,測定光路長の変化とみなして,ワイングラスを傾けた場合に,どのような色彩の変化が伴うかを調べた.【結果】試料の測色値は,全て同じ色相で,彩度の異なる分布を呈し,試料の測色値とソムリエによる色合いの分類の間には,明度以外に明確な関係は見られなかった.また,ガーネット系の試料3種類すべてについて,希釈による光学濃度の変化により,彩度と明度の関係に非線形性がみられた.

  • 室屋 泰三
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 15-18
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     絵画画像を対象にして,画面上の色彩変化の大きさ(波長)に対し,色変化の大きさを対応させる「波長分析」としてHaar基底などの完全正規直交系を用いて,その展開係数をもとに色変化の強度を求め,絵画画像の色彩変化の特徴を計量的にとらえることを試みてきた.Haar基底のような階段関数系は色変化の強度を1波長の中の平均色差に類似した量ととらえられる一方で,画面を均等に分割することにより,何等かの意味でひとまとまりとしてとらえるべき色変化を分割して計量してしまうことにつながる.そこで,画面の分割方法の自由度について検討を行ってきた.Haar基底のような2等分ではなく,再帰的に3等分する基底系を考案するなどしてきたが,均等な分割での限界は明らかであり,本研究では任意の分割を許容する2次元の基底系を作ることを検討し,離散COS変換やHaar基底と比較した.結果として絵画画像のタッチ等をより明確に捉えることができることがわかった.

  • 若井 宏平, 中山 泰, 神澤 啓彰
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 19-22
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

    自動車外装色,メタリックやパールと称されているものは光輝材成分の影響により「見る方向で色が変わる」とされ,色差管理は難しいとされてきた.定量的な色差管理のためにはマルチアングル測色計が使われるが,その中でも最も多くの19点の色情報を取得できるX-rite MA98を活用し,目視による色差違和感量の判定を総合的に計測値から算出することができた.測定点間を補完し最も目立つ色の領域を判定に取り入れるために三刺激値XYZを受光角に対する指数関数としてモデル化し2光源に対して4方向の曲線を導き,評価者の複数方向からの斜め目視評価(いわゆるすかし見)に対応できるようにした.実際のサンプルのうち斜め目視評価で特に差が大きく見えるものについては,さらにL*a*b*表色系だけでなくL*u*v*表色系を使うことで光輝材による赤味の減少が大きく目視のイメージに近い大きさで検知できた.過去発表した⊿L*の影響を小さくさせる計算方法に加え,2つの表色系によるハイブリッドな判定式を作成することで,見逃しの防止だけでなく目視評価結果との一致を果たすことができた.

  • 市原 恭代
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 23-24
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

    目的:人が色を認識できるのは網膜にある3種類の錐体細胞があるからである.錐体細胞は,450nmの光を主に感じるS錐体,530nmの光を主に感じるM錐体,560nmの光を主に感じるL錐体があるが,中には三つの錐体細胞がそろっていない人もいる.今回の実験ではM錐体が存在していないD型色覚(強度)の人の色刺激や色の文字刺激に対する印象を調査する.

    方法:SD法を使って色刺激と文字刺激に対しての印象やイメージを明らかにするための実験を行い2型2色覚者(D型強度)の被験者9人の色に対する印象を調べる

    因子分析を行い共通因子の数を決めるために「固有値」を求めた.スクリープロットから傾きがなだらかになっているところを見つけ固有値とする.今回は3以降の傾きがなだらかになっていることから,4以上の共通因子を仮定しても影響がないと考え固有値を3とした.

    結果:pinkとピンクは似た傾向が出ていない.Pinkは白やwhiteと似ている傾向がある.

    ・暖色系は似た傾向がある.

    ・緑は茶色系と似た傾向が出ている.

  • 山下 真知子
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 25-28
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     色彩空間における味覚,嗅覚,広・狭感,時間的体感,記憶等,空間の色彩がヒトに及ぼす影響を探る.同時にこれまでの定説ともなっている色彩心理効果の内容を吟味検討し,今後,新たに空間色における色彩心理効果を体系的に提示する計画で,まず本報ではVRによる色彩空間での味覚,嗅覚,快・不快感の評価実験を通して,色彩空間が味覚・嗅覚に及ぼす影響の手がかりを報告する.

  • 中西 ゆな, 五十嵐 崇訓, 岡嶋 克典
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 29-30
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     肌の透明感は,化粧品業界において重要な肌質感の一つである.しかし,「肌の透明感」という言葉に明確に定まった定義が共有されておらず,肌透明感の主観評価の値に妥当性がある(定量的解析に耐えうる)のか,肌透明感には肌の視覚情報の何が寄与しているのかは不明である.そこで,14枚の肌画像について8名の実験参加者が,どちらがより肌の透明感が高いかを選択する一対比較と,1枚の肌画像について透明感を100点満点で得点化する絶対評価を行なった.その結果,一対比較で得られた順序尺度間隔尺度と,絶対評価で得られた点数には高い相関(Rmean=0.97)があることが示された.これは「肌の透明感」という一貫性のある知覚尺度が存在することを示唆している.次に,肌透明感と画像統計量との関係を分析したところ,画像の平均輝度(肌の明度に相当)が肌透明感と高い相関を有していたが,色度差と平均輝度と組み合わせた式の方が,平均輝度のみの場合よりも高い精度で視覚情報から肌透明感を予測できることがわかった.これは,肌透明感における理想の色度点が存在する可能性を示唆している.

  • 遠藤 聡, 石田 泰一郎
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 31-34
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     近年,照明技術の発展に伴い,機能的な側面だけでなく,芸術性までも照明に求める場面が増えてきた.また,歴史都市として発展してきた京都は,夜間であってもほかの都市と異なる雰囲気を感じる人は多くいると思う.そんな京都の夜間照明に関して,現地調査により測定された実測値と,写真による印象実験によって得られた結果とを分析した既往研究は少ない.また,京都の観光地の夜間照明を対象にした既往研究は多く見られるが,京都市内広域を対象とした既往研究は少ない.本研究では,京都の都市照明における独自性に着目し,無作為サンプリングを行い,京都市内広域に渡って,さまざまな地点で照度の測定などの現地調査を行い,そこで撮影した写真を用いて印象評価実験を行い,その結果を分析し,結果と実測値や撮影写真を照らし合わせて「京都らしい」都市照明とはいかなるものかを検証した.そして「京都らしい」夜間照明の印象評価や物理量などに関して,一定の特徴が明らかになったことを論じる.

  • 真田 めぐみ, 冨山 眞知子, 沼上 恵里, 小松原 仁
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 35-38
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     パーソナルカラーで「似合う」という主観的評価が概ね共通の結果となる背景として,「顔の近くに配置した色の属性」と「顔の見え方」には法則性がある,という想定の下に視感評価を実施.被験者の平均85%から「顔の見え方は顔の近くに配置した色の属性と同方向へ変化する」という回答を得た.

     この視感評価の原因として,顔の近くに配置した調査色からの反射光の影響があるという仮説を証明する目的で,調査色からの反射光による顔色変化を計算により算出し「反射光の影響により顔色が調査色の属性と同方向へ変化する」との結果を得ている.さらにこの結果を検証する為,顔の近くに配置した色による顔色の変化について輝度計での測定を実施した.

     今回,色相差のある2色の比較では,計算データと同様に調査色と同方向の色度へ顔色が変化し,結果は十分認知できる色差であった.つまり調査色からの反射光の影響で実際に顔色が変化することが確認された.また額・頬・顎の4か所を測定,額よりも顎が顕著なデータとなり,この点からも反射光の影響ということが確認された.主観的と考えられていたパーソナルカラーの判断基準として,一定の法則性を明らかにする結果となった.

  • 斎藤 了一, 富永 昌治, 堀内 隆彦
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 39-42
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究では著名な印象派画家の色彩表現に着目して色使いの特徴解析を行っている.研究開始当初は,画家ごとの作品全体での色度点分布から主成分分析による解析や,3属性で作品ごとの平均値を用いた多面判別面による解析で色使い傾向を検討してきた.また,分布全体主成分や平均値では詳細な特徴を抽出し切れないため,画家ごとの色度点分布を属性ごとに均等分割し,分割中心値と分割域幅の関係を関数表現することで詳細な色特徴の解析を考案した.本報では,この分割による解析法を発展させて,各画家の作品ごとに3属性の近似曲線を数値表現することで,より詳細な解析をしたので報告する.対象としたのは,マネ,セザンヌ,ゴッホ,モネ,ルノアールの5画家における全65作品である.各画家作品の色分布を3属性ごとで色度点の個数が均等になるよう8分割し,この分割結果から分割中心値と分割域幅の関係を近似した曲線を求め,色相については余弦関数で近似し,明度と彩度では2次関数で近似曲線を得た.この近似曲線を数値表現して作品の比較をすることで色分布状態による特徴を示すことができ,且つ,平均値を合わせた検討により詳細な特徴を見出すことができた.

  • 中島 由貴, 何 水蘭, 渕田 隆義
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 43-46
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     顔の肌色の知覚的な色相や明るさは,口紅などのポイントメイクや照明光によって変化する.ネイルメイクもポイントメイク同様肌色の見えに影響する可能性があり,手は自身の視界に入ることから照明光による色の変化に気づき易いといえる.様々な照明の下で生活する今日において“照明光”,“肌色”,“化粧”の各々の視点から肌色の見えについて検討することは重要である.

     本研究の目的は,照明光によって手肌色およびネイル色の双方の色が変化したときの手全体の印象の変化を明らかにすることであり,LED照明下で(1)生活シーン(1:日常,2:パーティー)に適したネイル色の選択,(2)手肌色の印象評価,(3)ネイル色を含めた手肌色の印象評価を行った.

     実験の結果,①ネイル色を含む手肌色の印象は,ネイル色選択時の光源とは異なる光源で照明することによって変化した.②Ra80以上の忠実色再現の照明光下では手肌色の印象はネイル色の影響を受け,ネイル色によって手肌色の印象がポジティブに変化する場合とネガティブに変化する場合があった.③被験者は生活シーンに適したネイル色を選択する場合,自身の手肌色よりも嗜好性や環境に基づいてネイル色を選択した.

  • 辻本 晃大, 土居 元紀
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 47-49
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     監視カメラによるセキュリティなど,人物追跡は重要な課題である.複数の人物が映り込んだ場面を想定すると,衣服の色情報が対象となる人物を識別する有力な手掛かりとなる.しかし,照明変動がある場合や照明環境の異なる複数のカメラ間での人物追跡においては,追跡に失敗することが多い.筆者らのグループはこれまで照明光の変化に対応するため,シーン全体の色の平均値を用いて照明変動を補正し,変動に強い状態推定手法であるパーティクルフィルタを用いて人物追跡する方法を提案してきた.しかし,この手法には映像にハイライトが含まれていると追跡精度が落ちるといった問題があった.本研究では高輝度領域とその周辺画素にマスク画像を作成しマスク部分を平均値算出処理から除外することでハイライトを除去する方法を提案する.照明変動環境下での人物追跡実験を行った結果,ハイライトを除去しない場合の追跡成功率は平均91.9%,ハイライトを除去した場合の追跡成功率は94.1%となり,追跡精度の向上が確認できた.また,シーンの背景の色分布が変化した場合にも追跡できるか確認する実験を行い,平均96.9%の追跡精度で追跡できることがわかった.

  • 佐藤 竜也, 土居 元紀
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 50-52
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     自動二輪車には事故予防安全のための技術は少ない.そのため,運転者が周囲の状況を確認する必要があるが,後方には死角があり,また常に監視することも困難である.筆者らのグループは,「右後方より青色の車が接近」のように音声で警告することを想定して,1台の小型ビデオカメラを用いて,自動二輪車の走行中に後方映像を撮影し,接近車両検出を行い,また,車両色を検出する方法を提案してきた.しかし,問題点として接近車両に追い越される時に検出するので,開発目的からすると検出が遅い問題があった.本研究ではこれまでの研究に対してより早い時点で接近車両を検出できるようにブロックサイズの設定と消失点に対する接近車両検出領域の設定を改良する方法を提案する.直線およびカーブでの車両接近映像を撮影して実験を行った.直線時では接近車両の検出を0.9秒速くすることができた.カーブ時では以前の方法では検出できなかった場合でも検出が可能となった.ただ,誤検出が生じる場合もあったため,解決方法を今後の課題とする.

  • 吉留 大雅, 平井 経太, 堀内 隆彦
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 53-56
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     食肉の加熱調理において,色は焼き加減を判断する重要な指標の一つとして用いられており,加熱調理中の肉色変化の予測および視覚化は,スマートキッチンなどの調理支援技術に大きく貢献する.本研究では,肉色の決定に大きく関与している色素分子,ミオグロビンの熱変性に焦点を当て,加熱による肉色変化を分光ベースで推定するモデルを提案した.また,提案モデルによる肉色変化の結果を可視化するために,時間変化に基づく肉の加熱CGシミュレーションを作成した.提案モデルにおいて,加熱した肉の分光反射率は,ミオグロビンの誘導体3形態および変性ミオグロビンの分光反射率の線形和で表されると仮定した.ミオグロビン各形態の割合は,誘導体3形態および加熱した肉試料の分光反射率をK/S値(吸収散乱係数比)に変換することで導出した.推定モデルによる分光反射率と実測による分光反射率を比較すると,変性前の推定モデルの分光反射率には一部の誘導体の分光的特徴が反映されなかったが,変性が進行すると,推定モデルに各誘導体の特徴が確認されるようになり,肉色も実測値に近くなった.

  • 西田 法史, 土居 元紀
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 57-58
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     デジタルアーカイブにおいて,物体の詳細な色と表面形状を計測し記録することが重要である.様々な光源下での色の見えを再現し,また,顔料などの推定を行うには色を分光情報として取得することが必要となる.本研究では,カラー画像と距離画像を同時取得できるRGBDカメラとしてMicrosoft社のKinectを用い,任意の分光分布を持つ光を照射できる波長可変照明と組み合わせて,分光情報と3次元情報の同時取得を検討する.筆者らのグループは,Kinectがホワイトバランスやコントラストを固定できないため,画像中に分光反射率が既知である基準色を写り込ませて分光撮影し,そのRGB値をもとに物体の分光反射率を推定し,同時に距離画像計測を行う方法を提案してきた.しかし,白色を基準として分光反射率を求めていたが,大きな誤差が生じる場合があった.本研究では複数の灰色を写り込ませ,分光画像上で対象と画素値の近い2色の灰色を基準として対象の分光反射率を求める方法を提案する.カラーチャートを対象とした実験の結果,白色を基準とした場合の平均誤差は0.0325,提案手法の平均誤差は0.0259となり,推定誤差が小さくなったことから,提案手法の有効性を確認できた.

  • Learning Effect of the CUD Game for Designers
    桂 重仁, 須長 正治
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 59-60
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     デザイナーが配色をする際に,色覚の多様性に配慮し,カラーユニバーサルデザインを実践することが望まれている.デザインする際に使用する配色が混同色かどうかの判断にはソフトウェアが使われており,試行錯誤の上に配色を決定する必要がある.しかし,デザイナーが自ら混同色かどうかを判断できるようになれば,より効率的に配色決定ができると考えられる.そこで,我々は混同色を学べるゲームアプリを開発した.本研究では,このゲームアプリの学習効果について調べた.実験では,ゲームアプリをインストールしたiPhoneを用い,2つのゲームモードをそれぞれ15回ずつ15日間,色覚正常の被験者3名にプレイしてもらった.結果は,僅かではあるが学習効果が認められた.学習効果が小さかった原因として,ゲームの難易度が高く,短期間の学習では十分に混同色を覚えることが難しかった可能性が考えられる.

  • 住吉 哲郎, 石田 泰一郎
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 61-63
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,昼光の入射を想定した,高輝度な窓面が存在する室における空間の視環境評価がどのようになるのかを模型実験によって明らかにすることである.視環境の定量評価モデルは様々考案されているが昼光の影響についてまだ検討を要する段階である.被験者は左右対称な模型室(左:参照室(窓なし),右:テスト室(窓あり))を左右それぞれの眼で観察し,「窓面のまぶしさ感」「空間の好ましさ」(スケールを用いた評価)「空間の明るさ感」(マッチングによる評価)の順に回答する.「空間の明るさ感」について,テスト室床面中央照度とマッチング照度には高い相関性があったが一部減少するパターンが見られた.「窓面のまぶしさ感」については1/2サイズではUGRによる推定とおよそ同様の,1/4サイズではそれより高い評価がなされた.「空間の好ましさ」は,被験者変動が顕著なものの中央値ではまぶしさ感25未満が好ましさの必要条件となり明るさ感が高いほどより好まれた.昼光を想定する場合には,輝度比やそれに基づく明るさ順応の影響を考慮する必要があると考えられる.

  • 山崎 良馬, 横手 一希, 後河内 鉄, 石井 通友, 坂東 敏博
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 64-67
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     近頃ベーカリーショップでは電球色のLEDが広く使われている.我々は,その中でパンを見て美味しさを感じている.しかしながら,現環境がなぜパンが美味しく見えるのかは明確にはなっていない.例えばベーカリーショップの照明が変化することでパンの見えは変化する.見えの変化は購入者の購買意欲に大きな影響を及ぼすと考えられる.我々の研究として,ヒトがベーカリーショップにおいてどういった要素から美味しさを感じているのかを解明したうえで,パンにあった最適な照明環境の構築を目的とする.本研究では,異なる色温度を有する7種類のLED電球の下で,34人の被験者に対して美味しさ認識に関する被験者実験を行った.結果として,ヒトはLab表色系においてb値が高い,つまり黄色味が高いとおいしさを認識するということが分かった.このことから,電球色が最適な照明環境であると一意には言えず,照明装置によって電球色よりおいしさを認識する照明を作成できると言える.そのため今後は,本研究室にて開発した2波長から多波長の光源を作成できる照明装置を使用し,よりおいしさを認識できる照明の開発を行う.

  • 小原 義成, 佐藤 雅之, 須長 正治
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 68-71
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     1型および2型二色覚者は,赤と緑の混同色に対してあたかも三色覚であるかのように色名を「適切」に使い分ける場合がある.ただし,これは刺激が大きく,呈示時間が長い場合に限られることがこれまでの研究によって明らかにされている.一方,中心窩ではS錐体が少ないこと,また,黄斑色素の影響が大きいことから,刺激が小さい場合には,呈示位置の影響を考慮する必要がある.また,局所的に三色覚領域が存在する可能性もある.そこで,本研究では,刺激の呈示位置を傍中心窩の範囲内で変化させ,この現象の詳細を明らかにすることを目的とした.2型二色覚の男性1名と三色覚の2名が参加した.刺激の大きさ,呈示位置,呈示時間を変えて,カテゴリカルカラーネーミングを行った.その結果,呈示時間が十分に長い場合,刺激サイズを小さくしても,中心窩では,桃や緑の色名が「適切」に用いられていた.これは,二色覚者が網膜の局所領域において三色覚であるという仮説を支持する結果であった.ただし,刺激サイズが小さくなるにつれ,「適切」な色名の応答が減少するため,局所的な三色覚領域のみによって「適切」な色応答が生じているわけではないことが示唆された.

  • 白須賀 優香, 後河内 鉄, 石井 通友, 坂東 敏博
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 72-75
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     赤チョークや青チョークの視認性の低さは以前から問題となっており,色覚異常者にとっては色の違いも認識できないという問題を抱えている.本研究では,色覚異常の生徒と健常である生徒が共に黒板のチョークを視認できる照明の開発を目的とする.また照明にバリアフリー性を持たせるだけでなく健常者である生徒にとっても今以上に視認性が向上し快適に板書を行うことができる分光分布を検討する.第一・第二色覚者が「赤と緑が区別しにくい」という一般則は,黒板にチョークで書く文字についてはあてはまらない.検査表や食肉で有用とされていた照明がチョークではあまり有用といえなかったことから特定の色に関して同じ波長が有用であるとは一概に言えないことが分かった.チョークに関しては,赤と青の区別をするという点について,赤チョークがマゼンタのような分光反射率を持っていたことから青チョークとの差別化には,赤チョークのピーク波長付近であり,人間の認識できる範囲の赤波長である600nmが有用ではないかという結論に至った.

  • 城戸 今日子, 桂 重仁, 佐藤 雅之, 須長 正治
    2017 年 41 巻 6+ 号 p. 76-79
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

     近年,色覚の多様性への配慮からカラーユニバーサルデザインが浸透していた.しかし,現在の主な手法は,配色を決定するまでに試行錯誤を要するという問題点がある.そこで新たな手法として佐藤(2005),大井手ら(2016)により,まず2色覚が見ている色を使って配色をした後に,混同色線上に沿って色を変更することで3色覚向けの配色を決定するという手法が提案されている.本研究では,この新たな手法の確立に向け,2色覚が見ている色である黄青-明度平面上の色における配色に適した色カテゴリを調べることを目的とした.刺激には主波長575 nmと475 nmの黄青と明度軸からなる平面上の90色を用いた.背景色はN9.5の白であった.被験者には配色を想定しながら黄青-明度平面を配色可能な色カテゴリに分割してもらった,さらに,色カテゴリの特徴を最も示していると思う色を代表色としてカテゴリ毎に1色ずつ選んでもらった.結果より,白色背景条件では,黄青-明度平面において2色覚にとって配色に適した色数は最大7色で,それらの色カテゴリは黄,暗い黄,ごく暗い黄,灰,うすい青,青,暗い青であることが明らかになった.

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