2018 年 42 巻 3+ 号 p. 12-
人工照明下と自然光下で物の色の見えが異なって見えてしまうという照明の演色性を評価する研究は多く行われているが,実際に自然光を使ったものはほとんどない.また,評価実験には色票を用いることが多く,実物体を用いた研究は少ない.本研究では,分光分布の異なる人工照明と実際の自然昼光が実物体の色の見えにどのような影響を与えるかを調べる.実験では,参照光源とテスト光源の観察ブースを並べて設置し,それぞれ参照用の色票と実験刺激を置いた.参照光源にはD65近似蛍光灯を使用し,テスト光源には,D65近似蛍光灯,昼光色LED,自然昼光を使用した. 実験刺激は, 緑色のきゅうりと黄色のバナナの食品サンプル,赤色と青色の造花, 赤色と青色の積み木,各実験刺激に近い色の色票5種を用いた.被験者は標準色票の中から刺激と同じ色に見える色票(対応色)を選択し応答した.その結果,照度が同等の場合は自然昼光と人工光源下での色の見えに大きな違いは見られなかった.また,自然昼光の照度,相関色温度を変化させたとき,自然昼光の照度が高くなると,対応色はより鮮やかさが増し,相関色温度が高くなると,対応色の赤と緑の鮮やかさが減る傾向が得られた.