日本色彩学会誌
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S 錐体刺激値を手がかりとした視覚探索能への色カテゴリの影響
菱川 優介桂 重仁須長 正治
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2018 年 42 巻 3+ 号 p. 15-

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抄録

本研究では,須長らが報告したS錐体刺激値の差を手がかりとした視覚探索課題にて,探索時間への色カテゴリの影響を検討した.刺激として13個の円盤がモニタに呈示された.テスト刺激は,S錐体刺激値のみが異なる2色が6個ずつに,その2色のS錐体刺激値の中間の色が残りの1個に割り当てられ,計3色であった.2色で構成されたダミー刺激と1色のみで構成されたコントロール刺激も用意した.刺激の呈示時間は27~3200 msの8条件のうち,いずれかがランダムに選ばれた.被験者の課題は,知覚した色数およびその色名を答えることであった.刺激の呈示時間が長くなると,被験者が回答した色数は3色へと増加した.また,2型2色覚は3色覚と比べてより短い呈示時間で3色を知覚していた.また,色名応答の結果から,3色が同一の色カテゴリに分類されると3色覚は3色を知覚するのが難しくなり,2型2色覚はS錐体刺激値差によるカテゴリ分けをしている可能性が示された.この傾向は,須長らが報告した呈示時間に対する目標刺激検出の正答率と同様であった.このことから,S錐体刺激値の差を手がかりとした視覚探索課題は色カテゴリの分け方に影響されることが示唆される.

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© 2018 一般社団法人 日本色彩学会
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