2018 年 42 巻 3+ 号 p. 151-
景観計画に色彩基準を記載している行政団体の中で.定量的な数値評価を導入している計画がある.これらの数値基準の傾向と実態を明らかにし,今後の景観形成における知見を得ることを目的とする.本研究の調査対象は2012年2月1日現在までに景観計画を策定している全国274市町村の行政団体の市内全域の色彩制限基準を,国土交通省ホームページ景観ポータルサイトから調査しデータ分析を行った.マンセル値の制限を行っている189計画については三属性・地域属性別の制限値を分析し,景観形成基準の調査方法・各属性の分布状況・数値決定までのプロセスについてアンケートを実施した.アンケートの結果,マンセル値の制限基準は客観性や運用のしやすさが見られ,彩度を重視し地域属性に則した基準値の設定が行われ,調査基準値を参照していない計画の方が彩度基準が緩くなる傾向である.今後の課題として,住民・行政・業者が各々の立場で協働により,地域資源情報を共有しながらより地域特性を明確に打ち出した形態意匠の制限項目を提言することが求められる.