2018 年 42 巻 3+ 号 p. 155-
異常3色覚の色の見えは,2色覚と3色覚の間の色の見えであることは,様々な研究で明らかになっている.しかし,異常3色覚の異常の程度は,2色覚に近い強度から3色覚に近い弱度まで様々である.この程度の差による色の見えの変化の詳細は,まだわかっていない.一方,2色覚の色名応答は,色刺激の呈示時間に影響されることがわかっている.本研究では,異常3色覚の色名応答に着目することで,2色覚から3色覚へ色名応答がどのように変化するかを明らかにすることを目的とした.実験では,呈示時間を50から3200 msec.の7条件で変化させ,色刺激1023色を1色ずつモニタに呈示した.被験者の課題は,各色刺激に対し14色の色カテゴリによる色名応答をすることであった.被験者は,2型異常3色覚1名,2型2色覚1名,3色覚2名であった.結果は異常3色覚,2色覚共に呈示時間が長くなると3色覚の色名応答に類似する傾向を示した.この傾向は,低明度の緑に対し強く現れ,高明度色には明確に現れなかった.また,3色覚の色名応答との一致率は異常3色覚の方が高く,異常3色覚は2色覚と3色覚の間の特徴を示した.