目撃証言は有力な証拠となり,裁判の判決にも影響することがある.証言の正確さの研究は周辺環境の影響などを考慮し,様々な視点から行われている.本研究では,特に色についての情報が含まれる目撃証言に着目し,周辺環境の影響による色認識の変化を調査した.刺激は,明所視から薄明視の明るさレベルにおけるマンセル色票65色をディスプレイ上に再現した.刺激提示の際,周辺刺激はN5に相当する無彩色を用いた.色の計測手法はカテゴリカルカラーネーミング法を採用し,19色の色名から選択させた.実験条件は,照度レベル200lx,20lx,1.8lx,0.2lx,刺激サイズは視角5 deg,1 deg,0.5 deg,観察時間は9 sec,1 sec,0.5 secとした.実験は2回行い,一致した応答を調査した.結果,照度レベルの低下に伴い,刺激サイズ,観察時間の影響が現れ,色認識が著しく変化した.また,低照度レベル,小視対象,短時間観察の目撃証言において,「赤」「茶」「紫」「灰」という色情報は,実際には「ピンク」である可能性が高いことが予測される.以上より,観察条件が悪い目撃証言における色情報は慎重に扱う必要があることが示唆された.