2018 年 42 巻 3+ 号 p. 165-
建築分野では明るさの指標として水平面照度が用いられてきた.しかし人が空間を見る時,床面だけでなく室内全体を見渡すため,照度がそのまま人の感じる明るさを表すわけではない.よってこれまでに人間の感覚を考慮した様々な明るさの指標(以下,明るさ感と呼ぶ)が開発されてきた.例えば輝度分布を考慮して明るさ感を定量化する指標などが存在する.しかしこれらの指標は窓のない場合であり,昼光の影響は考えられていない.そこで先行研究では,昼光がどのように明るさ感に影響するかを調査してきた.先行研究では実験に模型を用いていたが,手間やコストがかかるため,本研究では様々な条件を簡単に再現できるディスプレイを用いて行い,ディスプレイ上でも昼光が明るさ感に与える影響は同様であるかを検討した.実験では昼光の強さの違う室内の写真2枚を提示した.それらを比較し片方の照明の強さを変えて,同じ明るさに揃えてもらった.その結果,先行研究と同様に同一照度上において,昼光が多く入射する空間の方が,少ない空間に比べて明るさ感が低いという結果が得られた.よってディスプレイ上でも,現実空間で得られる昼光の影響と同じであるとわかった.