日本色彩学会誌
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スーパービジョン 4色覚の分光モデル〜相思鳥はいかに紫外の世界を視ているか?
小寺 宏曄
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2018 年 42 巻 6 号 p. 265-

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抄録

 哺乳類の進化を辿ると,共通祖先の脊椎動物は4色覚であったが,恐竜が栄えた中生代には夜行性の2色覚に後退した.霊長類は恐竜の絶滅とともに昼行性を取戻し,約3500万年前に,人類の祖先は遺伝子複製過程での変異により LMS 3色覚を得たとされる.鳥類は紫外域の錐体をもつ代表的な4色覚であり,太古の祖先の色覚を今に継承している貴重な分類群である.共通祖先が視ていた紫外の世界を鳥の色覚から垣間できれば興味深い.

 本稿では,ROGU錐体をもつ相思鳥を例に,マトリクスR理論を4色覚に拡張する.拡張射影子R4は分光入力C(λ)を,相思鳥の基本色空間FCS(Fundamental Color Space)へ写像する.相思鳥に視えるのは,この写像された基本分光成分(fundamental)C *4(λ)である.まずsRGBカメラ画像の3刺激値からROGU 4刺激値の線形推定を行い,次にその逆写像からC *4(λ)を復元する.これをROGUに4色分解し,Uを着色して紫外像を可視化する.最後に,C(λ)が既知の計測データに拡張射影子R4を操作して基本分光成分の理論値を求め,提案モデルによる分光推定誤差を評価する.

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© 2018 一般社団法人 日本色彩学会
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