日本色彩学会誌
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日本色彩学会第50回全国大会[東京]ʼ19 発表論文集
白と黒の表面が触り心地に及ぼす影響 -高齢者を対象とした実験-
稲葉  隆
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キーワード: 触感, 白黒, 触り心地.
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2019 年 43 巻 3+ 号 p. 141-

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抄録

高齢者が手で触って使用する製品の表面はすべり落ちにくい加工がされるだけでなく,触り心地が良く感じられる工夫も重要である.そこで,表面の状態(粗さ)と色(製品色としてよく使われる白と黒)の関係によって触り心地に影響が生じるかを検討した.実験参加者は65歳から79歳までの男女計42名で,刺激は3種類の樹脂板(平らな面,浅いシボ加工された面,深いシボ加工された面)それぞれ白と黒の2色で計6枚を用いた.実験参加者は,刺激を指先で触り,粗さの度合い,触り心地の良さ,スマホやリモコンとしての使いやすさ・好き嫌いの4項目について7段階の尺度で評定した.評定項目ごとに色(2),表面状態(3)の2要因分散分析をおこなうと,触り心地の良さの評定において表面の状態の主効果が有意であり,色と表面の状態に交互作用が認められた.多重比較の結果,平らな面では白い樹脂板は黒いものより触り心地が良く評定され,深いシボをもつ面では黒い樹脂板が白いものより触り心地が良く評定される傾向があった.以上から,高齢者において色による触感(触り心地)への影響が示唆され,製品開発における色と表面加工のコーディネートの重要性が示された.

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© 2019 一般社団法人 日本色彩学会
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