昨年度同様に,高年者と若年者の作業時の心理評価に及ぼす色彩の影響を検討した.9色(赤・橙・黄・緑・青・紫・赤紫・黒・ピンク)の色画用紙を用いて,机上面に色刺激を配置し,その上で写経を行い,「好き,はかどる,楽しい,気分がいい,全体としてのプラス評価」を5段階で回答してもらった.対象者は,高年者17名(52歳~80歳,男性2名,女性15名,平均年齢66.1歳)と若年者18名(女性18歳~20歳,平均年齢19歳)である.結果は年代(2条件)×色(9条件)の18条件で比較した.高年者は若年者に比べ,紫・赤紫・黒で,楽しさを高く評価し,若年者では紫や黒に比べ,ピンクの楽しさが高く評価された.高年者は総じて気分のよさを高く評価し,全体に緑は赤・紫・黒に比べ,気分のよさが高く評価された.また黄に比べて緑ははかどると評価された.高年者は若年者に比して紫・赤紫・青の明度の低い色でも心理評価が高かったが,若年者は,ピンク,橙・黄のような明度の高い色の評価が高く,明度の低い紫・赤紫・黒については気分が悪く,全体としてマイナス感情を示した.