2020 年 44 巻 3+ 号 p. 108-
色彩は,赤で危険を知らせるなど,情報伝達の手段として用いられ,色彩感情はその基礎となる.色による情報は,色弱者を含む多くの人に対して共通であることが望まれるが,色弱者の色彩感情に関する検討は少なく,カラーユニバーサルデザインでもこの点を配慮したデザインが求められる.
本研究では色弱者の色彩感情を,視覚的な色の見えによる色彩感情と,色名による言語的色彩感情,の2つの視点から検討した.前者は一般色覚者と異なる色の見えを有する色弱者の色彩感情の変化,後者は色名という共通概念や経験の影響,を検討するものである.実験は,SD法により色弱者の色彩感情空間が一般色覚者と類似していることを確認したのち,予め用意した33色の中から,たとえば「危険を感じる色」という課題について,視覚的選択では色票から,言語的選択では色名のみを書いたカードから,選択する.課題は全体で25課題である.
結果は,色弱者(15名)の視覚的選択は一般色覚者(30名)と比較的類似していた.言語的選択でも両者は類似し,色弱者の色彩感情の形成には色に対する経験や共通概念の要因が強く影響することが判明した.