2020 年 44 巻 3+ 号 p. 151-
ディスプレイ上の顔画像の肌色の重要性はポートレートなど様々なシーンで増加しており,白さや好ましさ評価に関する多くの研究が行われている.しかしテスト画像数は50枚程度までで,各種の感性評価値が色空間内でどのように変化しているのかは明らかにされていない.本研究では,色空間における主観評価値の変化の様相の把握を目的とし,4種の素肌画像各々についてCIELAB色空間でほぼ均等に分布する343枚の画像群を作成して10名の観察者での評価実験を行った.化粧顔としての肌色として,仕上がりの好ましさ,色の肌なじみ,顔と首の色の違いの評価,基本的色彩属性として,色み(黄色み対赤み)および明るさについての評価を行った.仕上がりの好ましさに関しては,素顔がやや赤みのモデル顔では黄み方向にシフトした点を中心とし,素顔がやや黄みのモデル顔ではほぼ同じ色度を中心として,共にL*を2~4上げた領域が高得点となった.また彩度が低いほど「明るい」評価が高くなり,Helmholtz–Kohlrausch効果と逆の傾向が見られたが,同じ色分布の矩形色刺激ではその傾向は現れず,顔画像特有の特性であることが示唆された.