2020 年 44 巻 3+ 号 p. 25-
本研究は視覚から色彩を捉えることで想起される人間の感情に及ぼす影響に関する実証を経て,五感(味覚・嗅覚)や空間の広・狭感,記憶,時間的体感など色彩空間がヒトに及ぼす認知的な問題に迫る.本研究成果により,まだ十分に解明されていない色彩心理効果の定説の裏付けと吟味検討を含めて,抜本的に新しい知見を見出すことが目的の一つである.
本論はこれらのうち,「時間的体感」の評価結果について報告するものである.方法は立体可視化装置で投影した部屋空間内(高さ3m×奥行3m×横幅7.8mの投影スタジオに間口3.75m の2つの部屋モデル投影)で被験者に時間経過感覚を評価させた.結果,既知の通説である「赤空間は実際の時間経過よりも長く体感し,青空間は実際の時間経過より短く体感する」とは合致しない結果となり,「赤空間は実際の時間よりその経過を短く感じ,青空間は実際の時間よりその経過を長く感じる」とする経緯を報告する.