2020 年 44 巻 3+ 号 p. 279-
色彩に対する感性は,年齢や性別によって嗜好性に多様性があることが知られているが,それと発達段階に関わる問題の詳細な調査は少ない.とくに,「色彩感覚」に対する年齢や性別の影響を明らかにするためには,配置の仕方を含めた色に対する理解と把握能力,経験や表現能力も考慮に入れなければならないが,そのような研究例もほとんど見られない.最近,流行色なども含めた色に関する情報はファッションや様々な生活情報とともにインターネットなどを通じて容易に手に入るため,子供たちの色彩感覚の発達もそれらの情報などの影響を受けやすい.そのため,子供たちも現実的に目的を考えた色選択をすることが多く,必ずしも嗜好色と一致しないことも考慮しなければならない.
本研究では,子供たちの色に対する嗜好性とともに色の把握能力・表現能力を含めた色彩感覚について,iPadを用いた塗り絵を通し,観察・調査を行った.またこの研究では,主に小学生~大学生を対象とし,色覚の多様性にも留意しながら,性別や年齢などによる色彩感覚の多様性についても観察・調査を行い,発達段階に応じた生活や教育現場の環境づくりに役立つ指標とすることを目的としている.