2020 年 44 巻 3+ 号 p. 275-
地域ブランド向上に資するための色彩計画手法の構築を目的とし,地域ブランディングにおける地域資源を由来とした色彩を「ローカルアイデンティティカラー」として鹿児島県で実践的に検討した.
牧野(2019)の調査結果に基づき,鹿児島県らしい色彩の分析を行った.次に,地域住民との協働により,様々なデザインへの展開と地域イメージの統一的な表現の双方を実現しうる最適な色のあり方を検討した.策定した「かごんまの色」は,地域の共有財産として認識・定着されるように利用規定を設けてウェブサイト等で公開した.現在,かごんまの色の活用した商品開発は特産品,交流,環境ブランドの領域において計10件(2020年3月現在)を数え,今後も活用が見込まれている.共同研究開発商品のあづまバッグはコンクールで最高賞を受賞したり,かごんまの色の活用をきっかけに指宿市の地域資源色が独自に開発されたりするなど,地域ブランド向上につながる結果が得られた.今後は大学が核となり,地域住民に対してかごんまの色を持続的かつ自律的に活用できるような環境整備を進めるとともに,これにより期待される地域ブランド向上の検証を行っていきたい.