2020 年 44 巻 3+ 号 p. 79-
色覚異常者の体験している色を正常3色覚者が正確に予想することは容易ではない.そこでプロジェクタとカメラからなるシステムを用い物体上に色覚異常者の見ている色をシミュレートすることを考える.これにより,実環境において色覚異常者の知覚色を共有体験することができる.その際,適切な照明光を照射するには,物体表面の反射特性を事前に得ておく必要がある.本研究では,まず初めに複数の白黒縞画像の投影と撮影を繰り返すグレイコード投影法により,プロジェクタとカメラのピクセル位置の対応関係を得た.つぎに,複数種類の照明光を投影した状態で撮影し,プロジェクタRGB入力値とカメラ撮影画像のRGB値を比較することで対応の取れたすべてのピクセルにおける反射特性行列を推定した.これにより,プロジェクタカメラの対応の取れた個々のピクセルにおいて適切に色覚シミュレーション照明を投影することができ,実用的な実環境色覚シミュレーションが可能となる.