日本色彩学会誌
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日本色彩学会第51 回全国大会カラーポッド[京都]’20 発表論文集
ハイパースペクトルとHE 標本を用いた K-RAS 遺伝子の陽性・陰性の識別
吉谷 文孝伊藤 隆晃中矢 大輝佐鳥 新大池 信之野呂瀬 朋子
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2020 年 44 巻 3+ 号 p. 89-

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抄録

ハイパースペクトルカメラ(HSC)は,物質の色合い(スペクトル)情報と空間情報を同時に取得できる宇宙産業由来のセンサーである.近年医療分野での応用が期待されており人の目では識別することのできない物質の特定や分類に適している.本研究で大腸癌の病理標本をHSCで撮影し遺伝子検査を実施することなく,KRAS遺伝子の陽性,陰性の識別を実施する.なお,KRAS遺伝子とは細胞増殖を促進するシグナルを細胞内で伝達するという役割を持つ遺伝子であり,KRAS遺伝子の陽性・陰性は最適な化学療法を選択する際に重要な情報である.HSCで撮影された大腸癌を細胞抽出により平均スペクトルデータを取得しKRAS遺伝子の陽性,陰性のデータを教師データとテストデータ(7:3)に分割した.その後,機械学習の一種であるランダムフォレストを用いることで71%の識別精度が得られた.また,ランダムフォレストで得られる特徴量重要度から識別にもっとも影響を与えている波長を特定し,T検定を行った結果,大腸癌のKRAS遺伝子の陽性,陰性のスペクトルに有意差があることも明らかになった.本発表では,識別精度の向上に向けた研究についても報告する.

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© 2020 一般社団法人 日本色彩学会
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