2020 年 44 巻 3+ 号 p. 93-
ハイパースペクトルカメラは,対象物から入射する電磁スペクトルを高い波長分解能で検出できるVNIR(可視および近赤外)センサーである.近年医療分野での応用が期待されており人の目では識別することのできない物質の特定や分類に適している.本研究では,ハイパースペクトルカメラを生体分野に応用し,肺癌のHE染色標本をハイパースペクトルカメラで撮影し,免疫染色を行うことなく免疫染色マーカーp40,TTF-1の陽性,陰性の予測をランダムフォレスト,XGboost, LightGBM,サポートベクターマシン4つの機械学習手法で試みた.また,その際に構築したランダムフォレストの機械学習モデルで得られる特徴量重要度を用いて識別に重要な因子の特定を行った.症例数は診断時にTTF-1,p40免疫染色を要した66例において,TTF-1(陽性29例,陰性30例),p40(陽性29例,陰性33例)であり,解析には細胞核の平均スペクトルを使用した.結果としてランダムフォレストが最も識別精度がよく,TTF-1感度82%,特異度68%,一致率76%,p40感度83%, 特異度76%,一致率80%の識別精度を得た.また450nm~650nmにおいてHE染色におけるTTF-1,p40免疫染色の識別性を得られる可能性が示唆された.