2020 年 44 巻 3+ 号 p. 99-
肌色は,国・地域に差異があり,暗い色から明るい色,黄色味から赤味まで多様である.先行研究(Yoshikawa et al., 2012)では,赤味を帯びた肌は,黄色味を帯びた肌より明るく見える傾向を示した.しかし,顔の肌色の明るさ知覚が肌色や被験者の多様性にどのように影響されるかは明らかでない.ここでは,日本人と中国人被験者の肌色の明るさ知覚を比較した.実験では,若い日本人女性の平均顔を使用し,4つの肌色タイプのテスト顔を作成した.テスト画像(明度一定で異なる色相を持つ)とスケール画像(各々の肌色タイプの元の色相を持ち,明度が変化する)がタブレットディスプレイ上に並んで呈示され,被験者は,スケール画像の肌色の明るさをテスト画像と一致させるように調整した.その結果,日本人被験者は,黄色の肌よりも赤みがかった肌が明るいという傾向を示した.しかし,中国人被験者の結果はテスト顔によって異なり,明確な傾向が見られなかった.この傾向は,日本在住の留学生の場合も中国在住の中国人の場合も同様であった.したがって,被験者が背景として持つ文化や環境が,顔の明るさ知覚に影響を与えていることが示唆された.