2023 年 25 巻 1 号 p. 38-45
【目的】アトピー性皮膚炎(AD)は掻痒感や湿疹を主病変とする。ADは,2型ヘルパーT細胞(Th2)へ分化が偏ることで発症する。また制御性T細胞(Treg)が免疫応答を制御しADの発症を防いでいる。腸内フローラがADに深く関わると報告されていることから,プロバイオティクスの一つであるBifidobacterium breve strain Yakult(BY)に着目した。本研究では,ヒト様ADモデル(Nc/Nga)マウスを用いてBY経口投与による,AD改善効果について検討した。
【方法】NC/Ngaマウスの背中に塩化ピクリル溶液を塗布しADを発症させ,0.2mL/日の水道水を経口投与した群をAD群,BY懸濁液(5×109CFU/0.2mL/日)を経口投与しADを発症させた群をBY群とした。ADを発症させずに水道水(0.2mL/日)の経口投与した群をControl群とした。飼育期間終了後,病変部位である背中の皮膚・小腸を採取し,検討した。
【結果】背中の病変部位において,AD群と比較してBY群で病変の改善が見られた。また病変部位で,炎症のマーカーであるCOX-2タンパク質発現量が有意に減少した。そして,Th1・Th2発現がAD群と比較してBY群で減少し,Treg発現は増加した。小腸において,Th1,Treg発現がAD群と比較してBY群で増加し,Th2発現は減少した。
【考察】病変部位ではBY投与により,Tregの発現を増加に伴いTh2の発現が抑制され,ADが改善された。また小腸でも,Tregの増加により免疫バランスが改善した。以上より,BY投与により腸管免疫が改善されることで,ADが改善することが示唆された。