2024 年 26 巻 1 号 p. 12-19
目的;腸管感染症における抗菌薬適正使用を推進することを目的に,便培養でCampylobacter jejuniが分離された成人症例を対象として抗菌薬の使用状況と投与に関連する因子について調査した。
方法;2019年4月1日~2023年3月31日に東京慈恵会医科大学附属病院で提出された便培養でC. jejuniが分離された18歳以上の患者を対象とし,患者背景,抗菌薬投与の有無とその種類,転帰について診療録を用いて後方視的に調査した。
結果;対象となった129例のうち,男性は71例(55.0%),年齢中央値は26歳(四分囲範囲interquartile range: IQR; 23-35),基礎疾患を有する患者は26例(20.2%)で炎症性腸疾患が6例と最も多かった。症状は下痢が121例(93.8%)と最も多く,99例(76.7%)に発熱を認めた。129例中60例(46.5%)に抗菌薬が投与され,最も多かったのはキノロン系薬22例で,次いでfosfomycin 18例,マクロライド系薬15例であった。抗菌薬投与群と非投与群では,年齢や基礎疾患,症状に有意な差は認められず,薬剤感受性試験が施行された120株中48株(40.0%),47株(39.2%)がlevofloxacin,fosfomycinにそれぞれ非感性であった。
考察;本研究では患者背景や症状により抗菌薬の投与を決定している傾向は認められず,腸管感染症における抗菌薬適正使用を推進するためには,抗菌薬投与の適応となる患者背景,推奨される抗菌薬とその薬剤感受性の動向について周知する必要があると考えられた。