【目的】リンゴペクチンは,アレルギー性疾患に対する有効性が期待されているプレバイオティクスである。我々は先の学会にて,リンゴペクチンが腸内細菌叢の多様性に影響し,アトピー性皮膚炎(AD)の免疫バランスを改善しADへの有効性を発表した。本研究では,AD皮膚における組織学的解析と腸内細菌叢の組成の変化を検討した。
【方法】NC/Ngaマウス(雄)の背中に塩化ピクリル溶液を塗布してADを惹起させた(AD群)。AD群に0.4または4%リンゴペクチン溶液を35日間経口投与したものをそれぞれ0.4%P群または4%P群とした。35日後に,惹起部位の皮膚,血清,糞便を採取し解析した。
【結果】皮膚組織では,AD群において有意な表皮の肥厚がみられた(p<0.001)が,リンゴペクチン投与群(0.4%,4%)では表皮の肥厚が軽減した(p=0.12,p<0.05)。また,AD群に比較してリンゴペクチン投与群では肥満細胞とCD4+細胞の数が減少した(肥満細胞:p<0.05,p=0.11,CD4+細胞:p<0.01,p<0.05)。AD群に比較してリンゴペクチン投与群は,皮膚における血清IgEが低値であった(p<0.05,p=0.09)。糞便のβ多様性分析より,リンゴペクチン投与群の腸内細菌叢はControl群やAD群と異なるクラスターを形成していた。また,リンゴペクチン投与群では,制御性T細胞(Treg)の発現に関与するAnaerostipes,Roseburia,RF39が検出された。
【結論】リンゴペクチンの投与は,Tregの発現に関係している腸内細菌を増加させ,皮膚におけるTreg発現を増加させて免疫応答を正常化し,ADを組織学的にも改善したことが示唆された。
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