日本交通科学学会誌
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追突事故における被追突車両の押し出しとポストクラッシュブレーキによる二次被害削減効果の検証
寺島 孝明大賀 涼加藤 憲史郎田久保 宣晃
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2018 年 17 巻 2 号 p. 8-17

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抄録

警察庁発表の交通事故統計によれば、国内の2012年の交通事故発生件数約67万件のうち被追突車両が停止中の追突事故は約21万件であり、その内の13%が多重追突事故に至っている。本研究では、被追突車両が前方へと押し出されて、さらに前方に停止している車両等に衝突して二次被害を発生させる形態の多重追突事故を研究対象とした。追突事故の実態を把握するため、東京農工大学のヒヤリハットデータベースから追突事故時のドライブレコーダの記録を解析した結果、停止中または減速中に追突された車両の運転者の64%が、衝突の衝撃によりブレーキ操作を維持できずに中断していた。このブレーキ操作の中断中に、被追突車両は前方へと押し出され、一部の事故では多重追突事故に至っていた。そこで、本研究では追突事故における被追突車両にポストクラッシュブレーキシステムが搭載されており、追突直後に自動ブレーキ(ポストクラッシュブレーキ)が作動したと仮定して、被追突車両が押し出される距離を推定し、多重追突事故の削減の可能性を検討した。実車による追突事故の再現実験から車両追突時の反発係数を求め、得られた反発係数をドライブレコーダに記録された事故に適応することで、被追突車両が押し出される速度ならびに距離を推定した。ここで停止中の車列の最後尾とその前車との車間距離を2.5mと仮定した場合、最後尾の被追突車両が2.5m以上押し出された場合に多重追突事故に至ることになる。ドライブレコーダに記録された24件の追突事故のうち6件の事故で2.5m以上前方へと押し出されたと推定された。これらの事故に対して事故直後にポストクラッシュブレーキが作動したと仮定した場合、5件の事故で押し出し距離が2.5m以下に抑制できたと予想された。以上のことから、ブレーキ操作中に追突された際にポストクラッシュブレーキにより、被追突車両が前方の車両と衝突する二次被害を削減できる可能性が示唆された。

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