日本交通科学学会誌
Online ISSN : 2433-4545
Print ISSN : 2188-3874
外傷性脳損傷後10年以上経過した患者の家族の介護負担感
渡邉 修秋元 秀昭福井 遼太池田 久美本田 有正安保 雅博
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 19 巻 1 号 p. 3-8

詳細
抄録

【はじめに】交通事故や転倒転落を主な原因とする外傷性脳損傷(traumatic brain injury;TBI)は、とくに中等度から重度の場合、後遺する身体障害および高次脳機能障害により、介護する家族の負担は深刻である。しかし、外傷後の経過とともに、これらの障害は、改善していくことから、家族の介護負担感も軽減していくと考えられる。本研究は、TBI後、10年以上が経過した事例について、その家族の介護負担感を調査した。【対象および方法】TBI後、10年以上が経過した344例の患者の家族に、質問紙によるアンケート調査を行った。344例(男性289例、女性55例)は、受傷時平均年齢は24.0±13.3歳、現在の平均年齢は、43.6±12.3歳、TBIからの平均経過年数は、19.6±7.5歳であった。【結果】現在、296例(86.0%)が家族と同居していた。このうち、34例(全体の9.9%)が配偶者と同居していた。単身者は48例であった。バーセルインデックス(barthel index;BI)は、平均89.3±19.3で、日常生活が自立しているとされる85点以上は、270例(78.5%)であった。認知行動障害とZarit介護負担尺度は正の相関を認めた。一方、BIとZarit介護負担尺度には相関は認められなかった。就労群の受傷時年齢は非就労群に比し若年であった。そして、現在の年齢も、就労群のほうが若年であった。一方、介護負担感は、有意に就労群のほうが低かった。外出頻度別に介護負担感を比較すると、高頻度外出群のほうが、介護負担感は低かった。【結語および考察】受傷後、10年が経過しても介護する両親(あるいは主に妻)の負担感が大きい。介護負担感と認知行動面の障害には正の相関があり、さらに介護負担感には有意に就労の有無、外出頻度が関連していた。社会性の確立こそがTBIで表れやすい認知行動障害を改善に導く。患者ごとにそれぞれの目標に沿って、地域リハビリテーション、職業リハビリテーションを提供していくことが、家族の介護負担感を軽減することになると考えられる。

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本交通科学学会
次の記事
feedback
Top